国内ニュース:膵臓がん治療に新しい味方が登場
千葉大病院でMRリニアック治療が近くスタート


千葉大学医学部附属病院は2021年12月にも新しい放射線照射装置(MRリニアック)を稼働させると発表しました。「難治がんが多い肝胆膵のがんの治療に期待している」と放射線科の宇野隆部長は語っています。


 がんが周囲の重要な血管を巻き込んで手術が難しいような局所進行型膵臓がんや痛みを伴う骨転移に対して放射線療法は重要な治療法です。
 放射線療法の課題は、がんにだけ高線量の放射線をあてることです。健康な臓器にあてててしまうとそこが傷害され、出血など患者さんに不利益を生み出すことになります。これは当たり前のようですが、実際は呼吸に伴う膵臓の動きや前立腺のように膀胱におしっこがたまるなどの条件が変わって、あらかじめ狙ったところからがん病巣が動いてしまうという問題があります。


がん病巣の位置の微妙な変化に対応

 千葉大学医学部附属病院(千葉市)が導入した「Elekta Unity MRリニアック」はこうした問題の解決を目指してスウェーデンのElekta社(エレクタ)が開発した画期的な放射線治療装置です。鮮明な画像が得られるMRIとがん治療に用いるリニアックを一体化することに成功しました。
 この装置は世界で37台が働いています(2021年10月現在)。日本国内の稼働は千葉大学が初めてということになります(ちなみにリニアックは日本語で直線加速器といいます。電気の力で高速粒子を作り出す高エネルギー放射線治療装置です)。

 MRリニアックではMRIで体の中をリアルタイムで明瞭に可視化することができ、呼吸などでがん病巣の位置が動いても病巣を狙って照射することができます。照射範囲を極めて正確に絞り込むことができるために血管や健康な消化管など周囲の大切な臓器を守ることができるのが最大の特徴です。
 これまでの方法では事前に撮影したCT画像でがん病巣の位置を確認していました。呼吸や寝台で横たわる姿勢のわずかな違いで病巣の位置が変わっていました。そのためにがん病巣の周囲に10~20mmの余裕(マージン)を設定することが行われています。この部分は健康な組織ですから、どうしてもこれらの臓器への影響が出ます。しかしMRリニアックではこうしたマージンの設定を非常に小さくすることが可能になります。
 また従来はCTやX線透視でがん病巣の位置を確認するために金属マーカーを体内に刺入していましたが、その必要もなくなります。


治療期間の短縮も可能に

 放射線療法では、がん病巣により多くの線量を照射できればそれだけ大きなダメージをがん病巣に与えることができます。しかし、周囲の健康な臓器を傷害してしまうことを避けるために、1日1回。5~6週間かけて30回程度、放射線を当てるという方法が一般的です。MRリニアックでは、がん病巣に高線量を集中できることから、より短期間に治療を終えることも可能になります。


まず主治医に相談しましょう

 放射線治療の世界ではこのMRリニアックは注目の的です。しかし、実用化が2017年と新しいために、5年生存率などの客観的な治療成績が出てくるのはこれからということになります。
 MRリニアックによる治療されている主ながんは前立腺がん、直腸がん、肝臓がんなど体幹部のがんにその効果が期待されていますが、膵臓がんを対象とした治療も活発に進められています。千葉大学医学部附属病院放射線科の宇野隆先生も「肝胆膵のがんの治療に効果を上がることを期待しています」と語っています。

 MRリニアックの治療は誰でも受けられるかというと残念ながらそうではありません。強力な磁石を備えたMRIを使うために心臓ペースメーカーや人工関節、金属製のステントなどを埋め込んでいる方は利用できません。
 
 この治療に興味のある方はまずご自身の主治医に相談して、紹介状を書いてもらいましょう。その紹介状を持って千葉大学医学部附属病院放射線科を受診しましょう。

 2021年中に稼働するのは国内では千葉大学医学部附属病院だけですが、東北大学や大阪市立大学などでも導入の準備が進んでいます。東北大学では装置の設置は終わっており、2022年には治療が始まることになりそうです。これら施設稼働のお知らせはパンキャン・ジャパンでもお知らせいたします。

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MRリニアック装置と千葉大病院放射線科の宇野部長。部屋の照明は患者さんをリラックスさせるためにピンクやグリーンなどに変えることができます

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