■ ビデオセミナー「糖尿病の陰に潜む膵臓がんを見逃さないために:最新研究が示す新しい視点」 

~糖尿病の変化が教えてくれる、膵臓がん早期発見の新しいヒント~

「糖尿病」は「膵臓がん」の重要な危険信号となる可能性があります。米国パンキャン本部とアメリカ国立衛生研究所(NIH)が進めてきた、膵臓がんと成人発症型糖尿病の関連に関する研究成果をもとにして、膵臓がん早期発見につなげる啓発活動の提案が、権威ある EFPIA PACE賞 の受賞へとつながりました。日本国内でも同様の研究を先導されているのが、日本膵臓学会理事長の 正宗淳先生(東北大学) です。国民向けメッセージ作成にあたり、講師選定など多くのご助言を賜りましたことに、心より御礼申し上げます。

正宗先生は、膵臓がんや慢性膵炎の研究を長年牽引してこられた、日本を代表する専門家です。膵臓がんと糖尿病の深い関係にも注目し、「急に血糖値が悪化する」「新たに糖尿病を発症する」といった変化が膵臓がんの早期サインとなり得ることを、日本の臨床データを用いて研究されています。これはNIHやパンキャン本部が世界的に推進するテーマと一致し、膵臓がんの早期発見に新たな可能性を開く重要な取り組みです。こうした研究成果は、膵臓がんの仕組みを解き明かし、より早く見つけ、より治しやすくする未来につながるものとして、国内外で高く評価されています。

🌟 基調講演のご紹介
膵臓がんと糖尿病の関係は、いま世界中で注目されているテーマです。
今回の基調講演では、日本の最前線で研究と診療を担う専門家が、最新の知見をわかりやすく解説します。
「糖尿病と膵臓がんの関係をもっと深く知りたい」「自分や家族の健康を守りたい」という方にとって、必ず役立つ内容です。

滝川哲也先生 東北大学病院 消化器内科

日本には糖尿病患者が1,000万人、予備軍を含めると2,000万人が膵臓がんの危険因子を持つとされています。成人発症型糖尿病の診断が、膵臓がんの最初のサインとなる場合もあります。東北大学で進む最新研究をぜひご覧ください。

 

大橋健先生、国立がん研究センター中央病院 総合内科長/糖尿病腫瘍内科

急に糖尿病と診断された場合、膵臓がんの追加検査が重要です。糖尿病腫瘍科の視点から、最新の知見をわかりやすく解説いただきます。

 


① 血糖値の“急な変化”に気づく

  • 新しく糖尿病と診断された
  • これまで安定していた血糖値が急に悪化した
  • 体重減少や食欲低下が続く

こうした変化は、膵臓の異常が背景にある可能性があります。


② かかりつけ医に相談する
受診時には、次のように伝えるとスムーズです。
「血糖値の急な変化の理由を確認したい」
「膵臓の状態も念のため相談したい」


③ 必要に応じて追加検査を受ける
医師が必要と判断した場合、
血液検査・超音波・CT/MRI などの検査につながることがあります。


④ 家族歴や生活習慣を整理して伝える

  • 家族に膵臓がんの方がいる
  • 喫煙歴
  • 慢性膵炎の既往
  • 急激な体重減少
    これらは診察の判断材料になります。


⑤ 不安を抱えず、医療者や支援団体に相談する
疑問や不安は、早めに相談することで適切な判断につながります。


📊 アクションプランのまとめ
① 血糖値の急な変化に気づく             
・新規発症糖尿病 ・急な悪化 ・体重減少など   

② かかりつけ医に相談する
「血糖値の変化の理由を確認したい」と伝える

③ 必要に応じて追加検査へ
(血液検査・超音波・CT/MRI など)

④ 家族歴・症状・生活習慣を整理して伝える

⑤ 不安は一人で抱えず、医療者・支援団体へ相談

🌟 まとめ
糖尿病の変化は、膵臓がんの早期発見につながる重要なサインです。
「気づく → 相談する → 必要な検査につなげる」という行動が、命を守る第一歩になります。

 


🟣 PanCAN と NIH による「膵臓がんと糖尿病」研究の概要

膵臓がんは早期発見が極めて難しい「沈黙のがん」と呼ばれ、診断時にはすでに進行していることが多い疾患です。米国パンキャン本部(PanCAN)とアメリカ国立衛生研究所(NIH)は、この課題を克服するため、膵臓がんと糖尿病の深い関係に注目した共同研究を進めてきました。

研究の出発点となったのは、多くの膵臓がん患者が診断前に「新しく糖尿病を発症する」あるいは「既存の糖尿病が急に悪化する」という臨床的事実です。PanCAN と NIH の研究チームは、この現象が偶然ではなく、膵臓がんが体内で起こす変化の“初期サイン”である可能性を示しました。

膵臓がんが形成されると、腫瘍そのものだけでなく周囲の膵組織にも炎症や線維化が生じ、インスリン分泌や作用に影響を与えます。その結果、血糖値が急激に悪化し、糖尿病として現れることがあります。さらに研究では、腫瘍が放出する特定のタンパク質(バイオマーカー)が血液中に増えることが確認され、これを利用した早期発見の可能性が示されました。

PanCAN と NIH は、これらの知見をもとに、「新規発症糖尿病(NOD)や急激な血糖悪化を、膵臓がんのスクリーニングの入口にする」という新しいアプローチを提案しています。これは、従来の画像検査だけに頼らず、血液検査と臨床情報を組み合わせて、より早い段階で膵臓がんを見つけることを目指すものです。

PanCAN と NIH の研究は、糖尿病の変化を手がかりに膵臓がんをより早く見つけるという、これまでにない可能性を切り開くものです。今後も臨床研究やバイオマーカー開発が進むことで、膵臓がんの早期発見と治療成績の向上に大きく貢献することが期待されています。


糖尿病と膵臓がんの間に隠された深い関係:パンキャンは、NIHとこの問題を研究し、その成果を基にしたアクションプランが、欧州製薬団体連合会(EFPIA)が主催するPACE賞に選ばれました。この賞は、がん患者さんの生活の質と予後を向上させる、革新的で多分野にわたる患者ケアの取り組みを称えるものです。この研究は、これまで早期発見が極めて困難であった膵臓がんに対し、新たな光明をもたらします。

対処した課題:膵臓がんは、初期段階ではほとんど症状がなく、発見された時にはすでに進行していることが多い「沈黙のがん」です。その5年生存率は他のがんに比べて著しく低く、早期発見が生存率向上の鍵でした。一方、多くの膵臓がん患者さんが、がんの診断前に「糖尿病」を発症、あるいは糖尿病が悪化することが知られていました。この「糖尿病」というサインを、膵臓がんの早期発見のツールとして利用できないかと考えました。

糖尿病と膵臓がんの深い関係: 糖尿病と膵臓がんは、互いに影響し合う「双方向」の関係にあります。この複雑な連関を理解することが、この研究の核となる発見です。

発見されたメカニズムとバイオマーカー: では、なぜ膵臓がんが糖尿病を引き起こすのでしょうか。この研究は、その詳細なメカニズムを解明しました。がんが膵臓で成長する過程で、周囲の組織に炎症や線維化を引き起こし、インスリンの分泌を妨げたり、その働きを弱めたりします。さらに、この過程で、特定のタンパク質が血液中に放出されることが分かりました。研究者たちはこれを、早期発見のための「バイオマーカー」として活用することを提案しています。

膵臓がんに伴う糖尿病の発生メカニズムとバイオマーカーの役割プロセス:

膵臓の中に小さな腫瘍(がん)ができると、腫瘍そのものだけでなく、周囲の正常な組織にも「炎症」や「線維化(組織が硬くなること)」、「血流の悪化」といったさまざまな影響が及びます。このような膵臓内の環境の変化は、血糖値をコントロールする「インスリン」の分泌を妨げたり、効き目を悪くさせたり(インスリン抵抗性)します。その結果として、突然の糖尿病が引き起こされることがあります。ここで重要な鍵となるのが「バイオマーカー」です。この一連の過程において、特定のバイオマーカーが血液中に放出されるため、これを血液検査で捉える研究が進められています。バイオマ―カーの意義は、糖尿病が発症したタイミング、あるいはそれよりも前の段階で、これらの特定のバイオマーカーを測定することで、まだ自覚症状のない初期の膵臓がんが潜んでいる可能性を、より早く察知できるようになることです。

新しいスクリーニング・アルゴリズム: この研究では、この発見を実際の臨床に応用するため、新しいスクリーニング・アルゴリズムを開発しました。これまでのように糖尿病の治療だけを行うのではなく、新たに糖尿病と診断された、あるいは糖尿病が急速に悪化した患者さんに対し、バイオマーカー検査(および必要に応じて画像検査)を行うことを提案します。これにより、膵臓がんを早期に発見し、手術可能な段階で治療を開始できる可能性が飛躍的に高まります。

RESOURCE:

本ページは、EFPIA PACE賞の助成を受けて作成されたものです。

 

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