希望は膵臓がん研究からも生まれます。
パンキャンは毎年皆様からいただいた寄付をもとにして、精力的に研究をしている国内の医療従事者支援し、「パンキャン賞」として表彰しています。みなさまのご寄付とご声援は、日夜研究を続ける研究者、医療従事者たちの原動力となっています。

本年度のパンキャン賞は2015年6月に名古屋で開催された第46回日本膵臓学会において5名に授与いたしました。

 

 

PanCAN Basic Research Award(基礎研究)
石渡俊行 日本医科大学 大学院医学研究科 統御機構診断病理学
「膵癌における線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR-4)発現と治療標的としての可能性」
→抄録

 

PanCAN Clinical Research Award(臨床研究)

福武伸康 大阪府立成人病センター
「膵癌診断における血漿遊離アミノ酸プロファイルの有用性の検討」
→抄録

 

PanCAN Young Investigator Award1位(若手研究者賞)

田村公二 九州大学大学院医学研究院 臨床・腫瘍外科
「分子マーカーに基づいたIPMN由来浸潤癌と併存膵癌の鑑別診断の試み」
→抄録

 

PanCAN Young Investigator Award2位(若手研究者賞)

益子太郎 東海大学 医学部 消化器外科
「切除可能膵癌とBorderline resectable膵癌の定義と治療成績」
→抄録

 

PanCAN Young Investigator Award3位(若手研究者賞)

河毛利顕 広島大学大学院医歯薬保健学研究院応用生命科学部門 外科学
「膵癌における傍大動脈リンパ節微小転移の予後への影響」
→抄録

 


 

 

抄録

 

PCA1

膵癌における線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR-4)発現と治療標的としての可能性

石渡 俊行1、吉村 久志2、松田 陽子3、鈴木 妙子1、河本 陽子1、川原 清子1、石渡 俊二4、松下 晃5、中村 慶春5、内田 英二5、内藤 善哉1

1日本医科大学 大学院医学研究科 統御機構診断病理学、2日本獣医生命科学大学 獣医保健看護学応用部門 病態病理学研究分野、3東京都健康長寿医療センター 病理診断科、4近畿大学薬学部 医療薬学科 臨床薬学部門 医療薬剤学分野、5日本医科大学 消化器外科

目的: Fibroblast growth factor receptor 4 (FGFR-4)は様々な癌で過剰発現が報告され、癌の増殖への関与が注目されている。FGFR-4の細胞膜貫通部分をコードするexon 9のコドン388には、グリシンからアルギニンへ変化するsingle-nucleotide polymorphism (G388R)の存在が知られている。このSNPを有する前立腺癌、頭頸部癌、肺癌、乳癌の症例はSNPのない症例と比べて予後が悪いことが報告されている。さらに近年、胃癌、大腸癌と卵巣癌においてFGFR-4の発現を抑制することで、癌の進展が制御されたとの報告もみられる。我々は、膵癌におけるFGFR-4の発現と、FGFR-4の抑制効果について検討した。方法:ヒト膵癌症例において、酵素抗体法によりFGFR-4の発現を検討した。膵癌培養細胞におけるFGFR-4 mRNA発現レベルと、コドン388の遺伝子変異について検討した。FGFR-4のshort hairpin RNA (shRNA)を導入したPK-1細胞を作成し、細胞動態の変化を検討した。結果:ヒト膵癌組織において約半数の症例でFGFR-4が高発現し、これらの症例は統計的に腫瘍径が大きく、Stageが高かった。5種類の膵癌培養細胞で、FGFR-4 mRNAの発現が確認され、PK-1細胞とPANC-1細胞では、G388Rの遺伝子変異がみられた。FGFR-4 shRNAを導入したPK-1細胞はコントロール細胞に比べ細胞増殖能が低く、time-lapse法、scratch assay法での水平方向、boyden chamber法での垂直方向の癌細胞の遊走能も低下した。考察:膵癌の一部に高発現しているFGFR-4と、コドン388のSNPが癌の進展に重要な役割を果たしており、膵癌の新たな治療標的となる可能性が示唆された。

 

 

PCA2

膵癌診断における血漿遊離アミノ酸プロファイルの有用性の検討

福武 伸康1、上野 誠2、平岡 伸介3、島田 和明3、白石 光一4、猿木 信裕5、伊藤 敏文6、山門 實7、小野 信和8、今泉 明8、菊池 信矢8、山本 浩史8、片山 和宏1

1大阪府立成人病センター、2神奈川県立がんセンター、3国立がん研究センター中央病院、4東海大学医学部付属大磯病院、5群馬県立がんセンター、6JCHO大阪病院、7三井記念病院、8味の素株式会社イノベーション研究所

【目的】膵癌の早期診断および予後改善を図るため簡便で精度の高いスクリーニング方法が必要とされている。近年、複数の癌において、血漿中遊離アミノ酸(PFAA)は特徴的なプロファイルを示すことが報告されている。今回、膵癌診断におけるPFAAプロファイルの有用性について検討した。【方法】膵癌症例(PC) 360例、健常者(HC) 8372例、慢性膵炎症例(CP) 28例の空腹時血漿検体を収集した。PFAA濃度は液体クロマトグラフ質量分析法(LC-MS)で測定した。訓練セット(PC 120例、HC 600例)において、PFAA濃度を変数に用いた多変量ロジスティック回帰分析により、PCを判別するPFAA indexを導出した。次に、独立した検証セット(PC 240例、HC 7772例、CP 28例)を用いて各群間の判別能の評価を行った。判別能の評価はROC曲線下面積(ROC_AUC)値で行った。さらに、膵癌症例におけるCA19-9、CEAおよびelastase-1とPFAA indexとの相関について検討を行った。【成績】訓練セットにおいて、PCではHCと比較して特にセリン濃度が高値を示し、トリプトファンおよびヒスチジン濃度は低値を示した。PCとHCを判別するPFAA indexの導出を試み6アミノ酸からなるROC_AUC 0.89(95%CI:0.83-0.95)のindexが得られた。独立した検証セットにおいて、HCとのROC_AUCはPC全症例で0.86(95%CI:0.84-0.89)、stage IIA、IIB(UICC)症例のみでは0.81(95%CI:0.75-0.86)、PC全症例とCP間のROC_AUCは0.87(95%CI:0.80-0.93)であった。また、膵癌症例において、PFAA index値とCA19-9、CEAおよびelastase-1との有意な相関はみられなかった。【結論】本研究において、PFAAプロファイルは膵癌症例において特徴的に変動することが示され、また健常者と膵癌症例を判別するためのPFAA indexが導出された。PFAA indexは独立した検証セットでも高い判別能を示し膵癌スクリーニングのための血漿バイオマーカーとして有用である可能性が示された。

 

 

PCA3

分子マーカーに基づいたIPMN由来浸潤癌と併存膵癌の鑑別診断の試み

田村 公二、大塚 隆生、水元 一博、田中 雅夫

九州大学大学院医学研究院 臨床・腫瘍外科

【背景】膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)はそれ自体がIPMN由来浸潤癌(Inv-IPMC)の前駆病変であるが,我々が報告したIPMNと離れて“併存”する通常型膵癌(PDAC)が近年注目されている.IPMNとPDACが近接する場合は,癌がInv-IPMCか併存するPDACかの病理学的診断に迷うことがあり,日本膵臓学会による全国調査でも約15%が鑑別困難例であると報告された.今回,既報の分子マーカーによりIPMN併存膵癌とInv-IPMCの鑑別が可能かを検討した.【対象と方法】当科で切除され病理学的にIPMN併存膵癌と診断された19例を対象とした.その中でIPMN病変部(n=21)と併存するPDAC病変部(n=19)の計40病変について,GNAS・KRAS遺伝子変異解析を行った.対照群としてInv-IPMCと診断された20例の浸潤癌部と非浸潤癌部(膵管内腫瘍部)のGNAS・KRAS遺伝子変異を解析した.遺伝子変異解析はHRM法とパイロシークエンス法を用いた.【結果】IPMN併存膵癌と診断された19例中17例で同一膵内でもIPMNとPDACの遺伝子変異パターンは異なり,細胞起源が異なることが示唆された.逆に,Inv-IPMCの浸潤癌部と非浸潤癌部のKRAS・GNAS遺伝子変異パターンは20例中17例(85%)で一致した.病理学的には併存PDACと診断されていた2例でその癌にGNAS変異を認めたが,共に浸潤癌部とIPMNが近接し,1例はGNAS・KRAS遺伝子変異パターンが一致したため分子生物学的にはIPMN由来癌である可能性が示唆された.もう1例は近傍のIPMNと同じGNAS変異(R201H)を認めたがKRAS変異パターンが異なっており,IPMNのheterogeneityを反映したものである可能性があるが確定には至らなかった.【結論】IPMNに特異的なGNAS遺伝子変異とIPMNおよびPDACに共通するKRAS遺伝子変異解析は,PDACとInv-IPMCの鑑別に有用と考えられる.IPMN併存膵癌の自然史解明のためにも正確な鑑別診断法の確立が望まれ,今後更なる症例の蓄積が必要である.

 

 

PCA4

切除可能膵癌とBorderline resectable膵癌の定義と治療成績

益子 太郎1、矢澤 直樹1、古川 大輔1、和泉 秀樹1、増岡 義人1、川嶌 洋平2、小川 真実2、川口 義明2、峯 徹哉2、中郡 聡夫1

1東海大学 医学部 消化器外科、2東海大学 医学部 消化器内科

【はじめに】Borderline resectable (BR)膵癌の定義が国際的に統一されていないため、術前診断における切除可能膵癌の定義も曖昧となっている。NCCNガイドラインでは門脈・上腸間膜静脈に180度未満しか接触していなくても血管の変形または塞栓を伴えばBR膵癌としているのに対し、Intergroupの定義ではより厳格に門脈系に180度以上接しているものだけをBR膵癌としている。そこで、どの程度の門脈浸潤までを切除可能膵癌、どの程度以上の浸潤をBR膵癌とするのが妥当であるのかを明らかにするために、術前画像診断での門脈浸潤の程度と手術成績を検討した。【対象と方法】NCCN ガイドラインでのみBR膵癌とされる、門脈・上腸間膜静脈に180度未満接触する膵癌をBR-p群、門脈・上腸間膜静脈に180度以上接触するが動脈には接触しないものをBR-P群、動脈に180度以下接触する膵癌をBR-A群とした。2005年6月から2014年12月までの間に当科で切除を試みたBR-p+BR-P+BR-A膵癌の合計は154例で、その内訳はBR-p群53例、BR-P群24例、BR-A群77例であった。【結果】BR-p群の切除率、切除例中のR0切除率は98%,71%、BR-P群は83%,60%、BR-A群は38%,45%であり、BR-A群の切除率およびR0切除率ともに極めて不良であった。また切除例の組織学的リンパ節転移陽性率は、BR-p群:73%、BR-P群:70%、BR-A群:62%で各群間に差はなかった。【考察】門脈・上腸間膜静脈に180度未満接触して血管変形を認める膵癌はNCCNガイドラインではBR膵癌とされるが、98%切除可能であるのでBR膵癌とするのは妥当ではなく、切除可能膵癌とすべきである。門脈・上腸間膜静脈に180度以上接触する膵癌は、約半数のみがR0切除可能であることからBR膵癌とすることは妥当である。【結論】主要血管に接触しないか、門脈・上腸間膜静脈に180度未満接触する膵癌を切除可能膵癌とすべきである。

 

 

PCA5

膵癌における傍大動脈リンパ節微小転移の予後への影響

河毛 利顕、村上 義昭、上村 健一郎、橋本 泰司、近藤 成、中川 直哉、佐々木 勇人、大毛 宏喜、末田 泰二郎

広島大学大学院医歯薬保健学研究院応用生命科学部門 外科学

【背景】膵癌における傍大動脈リンパ節(PALN)微小転移の予後への影響について,PALN転移と同等であるかどうか,現在でも一定の見解が得られていない.【目的】膵癌におけるPALN微小転移の予後への影響について検討する.【対象と方法】2002年5月~2014年3月までに,当院で膵癌に対し所属リンパ節とPALN郭清を伴う根治術を施行し,PALNの病理学的検索が可能であった195例を対象とした.PALNにおける微小転移は,HE染色では検出されず,抗サイトケラチン抗体CAM 5.2を用いた免疫組織化学染色により初めて検出されるリンパ節転移とした.臨床病理学的因子と全生存期間(OS)の相関について単変量・多変量解析を用いて検討した.【結果】195例中19例(10%)にHE染色でPALN転移陽性を認め,HE染色でPALN転移陰性であった17例(9%)に免疫組織化学染色で微小転移陽性を認めた.PALN転移陰性群,微小転移陽性群,HE染色陽性群に3分類し,臨床病理学的因子との関係を検討したところ,リンパ節転移(p<0.001),UICC T分類(p= 0.039)は有意差を認めた.また,この3分類とOSとの関係について単変量解析にて検討したところ,陰性群に対して微小転移群(p= 0.002),およびHE陽性群(p= 0.003)のOSは有意に短く,微小転移群とHE陽性群の予後には有意差を認めなかった(p= 0.719).次いで,Cox比例ハザードによる多変量解析を行ったところ,術後補助化学療法(HR: 2.39, p<0.001),PALN微小転移(HR: 2.92, p= 0.003),HE染色陽性(HR: 1.82, p= 0.036)が独立した予後不良因子であった.【結論】この研究において,膵癌のPALN微小転移は,PALN転移と同様に予後不良因子となり得ることが示唆された.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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