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先進医療B:局所進行膵癌に対する化学重粒子線治療

2018年2月18日


難治性がんの代表である膵臓癌の治癒に向けた研究開発が世界で進んでいます。そのなかでも日本が特に進んでいるのがメスのいらない手術として
知られている重粒子線治療の分野です。海外まで渡航することなく、国内の最寄りの重粒子線治療施設(現在、膵臓がんの臨床試験は4施設)において
受けられるというメリットがあります。局所進行膵癌に対する化学療法と重粒子線治療の併用療法の臨床試験がいま進んでいます。

対象:局所進行膵癌の患者

 

■重粒子線治療について
放射線治療に抵抗性の腺癌では、手術のみが有効な治療法と長い間言われてきました。そこに重粒子線治療が登場し、腺癌においてもその有効性が
認められるようになりました。重粒子線の特徴として、腫瘍に集中して高い線量を照射することができるので、正常組織への障害も少なく、
また、短期間に治療が可能となります。一回の照射線量を高くすることでより殺細胞効果の高い治療が可能となりました。

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■治療効果について

切除不能膵臓癌に対して、標準化学療法のひとつであるゲムシタビンと重粒子線を併用した治療が行われますので、これまでの治療より高い治療効果が期待されています。従来の治療法による成績と本試験の治療成績を比較検討することを目的として行われる臨床試験です。

(※参考資料:最新の重粒子線治療の成果:膵がん http://ryushisen.com/pdf/ayu4-shinoto_yamada.pdf)

 

■副作用について

ゲムシタビンによる化学療法を併用するために抗がん剤による副作用がでることがあります。また、軽度の食欲不振、腹痛などの症状がでることがあります。治療後の晩期の副作用としては、消化管出血、潰瘍などが起きる場合がありますが、他の放射線治療と比較すると腫瘍周囲の正常組織の線量が極めて低いことから頻度も低くて軽いことが特徴です。

 

■陽子線と重粒子線の違いは

よくある質問に陽子線と重粒子線の違いについて聞かれますが、重粒子は用紙に比較して約12倍重いため、がん細胞に与える影響も大きくなります。X線治療の生物学的効果と比較すると、陽子線は1.1倍(10%増)、重粒子線は約3倍(300%増)ですので効果が極めて優れていることがわかります。また、重いことから体内の深いところまで直進する性質が強いので、深部における線量集中性は重粒子線の方がはるかにすぐれています。

 

■手術との違いは

膵臓がんの手術は難易度が高いのが知られており、膵臓がんの手術を年間50症例以上行っているハイボリュームセンターで受けることが日本肝胆膵外科学会により推奨されています。日本の外科医は世界一のレベルですが、術後の合併症は一定の割合で発生しています。その点、重粒子線治療は、手術のようにからだにメスを入れないので、手術のような痛みも合併症もありません。また、外来で治療を受けることができることから、入院する必要がなく、生活・仕事への影響も最低限で済みます。高齢者にもやさしく、からだへの負担が少ない治療と言われています。

 

■費用はどれくらいかかりますか?

先進医療としての費用は、314~350万円必要となります。

 

■臨床試験を受けるには

参加条件:局所に留まっている、膵臓がんで以下の条件を満たした患者が参加することができます。

1.遠隔転移はないが、周りの血管にがんが広がっているために手術ができない

2.病理学的検査にて、膵腺癌(PDAC)と診断された

3.内視鏡県検査にて活動性の消化管潰瘍がないと診断された(胃、十二指腸)

4.年齢が20歳以上、80歳以下の方

5.歩行可能で、身の回りのことはすべて自分ですることが可能。日中の50%以上はベッドの外で過ごすことができる方

6.膵臓がんの手術や放射線治療をまだ受けていない方

 

参加不可:以下の方はこの臨床試験には参加できません。

1.腫瘍が胃や十二指腸にまで広がっている場合

2.CT検査などで腹水が認められた場合

3.黄疸に対して金属ステントを使用している場合

4.化学療法の初回投与から90日以上経過している場合

5.重篤な合併症がある場合

6.他の臓器に癌があり、治療中である場合

7.妊娠または妊娠しいている可能性がある、または授乳中の女性の場合、

 

 

■重粒子線治療を受けるには

1.外来を受診して治療が適応になるかを判断してもらいます

2.適応あり と判断されたら、説明を受け、治療同意書に署名し、治療予約をします。

3.治療の準備として、照射位置がづれないようにするために固定具を作成します。

  からだの型をとります。

4.治療計画用のCT撮影を行います。線量分布を作成します。

5.固定具の作製などの準備のために約1~2週間かかります。

6.治療がはじまりますと、12回照射を受け、約3週間で終了します。

  重粒子線 1日1回4.6Gy (RBE)、合計12回、総線量55.2Gy (RBE)を照射

  ゲムシタビン 1回1000mg/m2を週1回投与を3週連続し、4週目は休薬する。

7.治療台の上で、技師が位置合わせをし、一回の照射時間は僅か3分程度です。

  入室から退室までの時間は20分程度です。

8.12回照射が終わると、定期的にCTを撮影し、経過観察をします。基本的には

  地元の紹介医の先生と重粒子線治療施設の先生と両方で経過観察します。

9.試験治療中は、ゲムシタビン以外の分子標的薬を含む化学療法、および免疫療法の併用は認めません。

  また、重粒子線治療の照射範囲と重複する部位への放射線治療は認めていません。

 

■お問い合わせ:

千葉県:放射線医学総合研究所病院      TEL043-206-3306

群馬県:群馬大学重粒子線医学研究センター  TEL027-220-7111(代表)

佐賀県:九州国際重粒子線がん治療センター  TEL0942-81-1897

神奈川県:神奈川県立がんセンター      TEL045-520-2222

 

■参考資料:重粒子線治療多施設共同臨床試験ウェブサイト

http://www.nirs.qst.go.jp/hospital/J-CROS/index.html

 

■参考資料:放射線医学総合研究所病院 | 放射線医学総合研究所(放医研)

http://www.nirs.qst.go.jp/hospital/index.shtml

 

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 ■先進医療について

先進医療とは、国民の安全性を確保し、患者負担の増大を防止するといった観点を踏まえつつ、国民の選択肢を広げ、利便性を向上するという観点から、以下について、安全性、有効性等を確保するために一定の施設基準を設定し、当該施設基準に該当する保険医療機関の届出により、又は安全性、有効性等を確保するために対象となる医療技術ごとに実施医療機関の要件を設定し当該要件に適合する保険医療機関の承認により、保険診療との併用を認めるものです。

今回の多施設臨床研究試験については、将来的な保険収載が認められるよう、それぞれの治療の有効性と安全性を評価するため先進医療Bとして実施されるものです。

「厚生労働大臣の定める先進医療及び施設基準の制定等に伴う実施上の留意事項及び先進医療に係る届出等の取扱いについて」(平成24年7月31日付医政発0731 第2号、薬食発0731 第2号、保発0731 第7号)においては、先進医療Aについては、下記の①又は②に掲げるもの、先進医療B については、下記の③又は④に掲げるものとされています。


□先進医療A

①未承認等の医薬品若しくは医療機器の使用又は医薬品若しくは医療機器の適応外使用を伴わない医療技術(④に掲げるものを除く)

②以下のような医療技術であって、当該検査薬等の使用による人体への影響が極めて小さいもの

 イ. 未承認等の体外診断薬の使用又は体外診断薬の適応外使用を伴う医療技術

 ロ. 未承認等の検査薬の使用又は検査薬の適応外使用を伴う医療技術


□先進医療B

③未承認等の医薬品若しくは医療機器の使用又は医薬品若しくは医療機器の適応外使用を伴う医療技術(②に掲げるものを除く)。

④未承認等の医薬品若しくは医療機器の使用又は医薬品若しくは医療機器の適応外使用を伴わない医療技術であって、当該医療技術の安全性、有効性等に鑑み、その実施に係り、実施環境、技術の効果等について特に重点的な観察・評価を要するものと判断されるもの。

 

特に、上記、④における、「当該医療技術の安全性、有効性等に鑑み、その実施に係り、実施環境、技術の効果等について特に重点的な観察・評価を要するものと判断されるもの」については、具体的にどのような技術が該当するのか、わかりやすく整理する必要があります。

 

以上、

 

 

 

 

 

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