NETの診断法

 

診断と誤診 (Diagnosis and Misdiagnosis)

 

NETがんは診断が難しいことが知られています。しばしば非特異的で、あいまいな症状を発症した後、正しい診断がくだされるまで平均で3〜7年かかることがあります。 NETがんが発症初期の段階で正しく診断された場合、しばしば手術で治癒することができます。しかし、現在のところ、大部分のNETがんは、体の他の部位に既に広がっている後期に診断されるため、これらの症例では、がんが治癒することはほとんどありませんが、症状はしばしば何年もの間、うまく管理することはできます。

 

なぜNETはよく誤診されるのか

 

身体のどこにあるかによって、NETがんはさまざまな症状を引き起こす可能性があります。これらの症状は、軽度または非特異的であり、しばしばより一般的な病気の症状と似ているために誤診されやすいのが特徴です。 例えば、カルチノイド腫瘍に関連する症状の多くは、過敏性腸症候群(IBS)、クローン病、消化性潰瘍疾患、胃炎、他の消化障害、喘息または肺炎の症状の多くに類似しています。 多くの医師はNETがんに慣れていないため、最初の診断でNETがんを疑うことはあまりありません。

 

なぜNETは発見が難しいのですか

 

NETのがんは、いくつかの理由で発見が難しくなっています。
・サイズ - NETがんはしばしば小さく、いくつかのNETの種類は、1センチ未満の大きさなためにCTでは検出できません
・場所 - NETがんは、身体のほぼどこにでも発生する可能性があります
・症状 - これらはNETによって非常に異なることがあり、一部の患者は全く症状がありません
・検査 – NETがんには多くの異なるタイプがあり、ここに一連の特殊検査が必要となります
・生検は、NETがん診断のための決定的なツールですが、どこに腫瘍があるのかわからないと生検ができません

 

 

どのような検査がNETがんを診断するために使用されますか?

 

NETがんを検出するために使用されるいくつかの異なる検査と画像診断があります。これらの検査の中には、がん細胞によって誘発されるホルモンの変化を調べるものや、腫瘍自体を探すものがあります。 注意:NETの診断で使える標準的な検査セットはありません。各患者は異なるテストの組み合わせを受ける必要があります。これらの検査についてご不明な点がございましたら、医療チームと相談してください。

 

生検と病理診断

 

疑わしい腫瘍から組織片を採取し、それを組織病理医と呼ばれる専門家が病理診断室で分析します。具体的には、生検または外科的に採取された検体は処理され、その組織切片がガラススライド上に置かれ、病理医により顕微鏡下で検査され病名が診断されます。病理医は、生検試料を分析し、腫瘍に増殖指数、すなわち、分裂している(増殖している)腫瘍内の細胞数の指数を評価します。 2%未満の増殖指数は、腫瘍が非常に遅く成長することを意味し、10%を超える値はより速い成長を示唆します。増殖指数を決定するための試験は、Ki67またはMIB1と呼ばれます。顕微鏡下で腫瘍を見ることで、どのタイプのNETがんであるかを正確に判定することができます。病理診断は、NETがんを確定するための唯一の方法です。

 

netter blood test

血液検査 (Blood Tests)

患者は空腹時の腸ホルモン血液検査を受けるように求められ、他の検査も含めて採血されます。

  • 特定のNETマーカー(特にクロモグラニンAおよびB)
  • 膵臓ポリペプチド、
  • インスリン
  • ガストリン、
  • グルカゴン、
  • ニューロテンシン、
  • VIP(血管腸ペプチド)
  • 特定ペプチド
  • ホルモン
  • 腎臓と肝臓の機能チェック

これらの検査の結果がNETの存在を示唆する場合は、さらなる画像検査が実施されます。

 

 

その他の生化学検査

 

以下は、その他の生化学検査の要約です。

  • 全血球検査(赤血球、白血球、血小板、ヘモグロビン) 
  • 腎機能検査(尿素および電解質) 
  • 肝機能検査
  • 甲状腺機能検査下垂体ホルモンスクリーン(例えば。副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、プロラクチン、成長ホルモンおよびコルチゾール))
  • 血清カルシウム、副甲状腺ホルモン濃度(すべての膵NET患者において、MEN-1症候群の単純なスクリーニング試験として)

 

尿検査(Urine Tests)

 

5-HIAA(ヒドロキシインドール酢酸)は、体内で自然に排出される物質です。通常、尿には少量しか存在しません。5-HIAAレベルの上昇はNETを示すことがありますが、診断を確認するためにはさらなる試験が必要です。この検査は、NETがん患者であっても陰性の場合がありますので、さらなる検査は不可欠です。

 

24時間の尿検査の前、また最中には、以下の特定の食品を控えるように注意されます。チョコレート、オリーブ、バナナ、パイナップルおよびそのジュース、すべてのトマト製品、梅、ナス、アボカド、キウイフルーツ、ナッツ、特にクルミ、紅茶、コーヒー、アルコール。また、試験の2日前に特定の咳、風邪およびインフルエンザ薬を含む下記の医薬品を避けるように求められます。高血圧薬、筋弛緩剤であるジアゼパム(商品名 Valium)およびシクロベンザプリン(商品名、Flexeril)、また同様な効果をもたらす健康食品で天然ハーブ(MAO阻害剤)が含まれるもの。これらは人工的にセロトニン値を上昇させ、誤った試験結果を与える物質を含んでいるためです。

 

 

内視鏡検査(Endoscopy)

 

この試験では、内視鏡と呼ばれるフレキシブルなカメラを使用して消化管を検査します。チューブは、喉の後ろにある食道(胃内視鏡)または直腸(大腸内視鏡)を介して挿入することができます。両方の場合において、患者には鎮静剤が与えられます。この手順の間に異常に見える組織が見つかった場合、生体組織を採取して顕微鏡下で検査することができます。細胞の形や異常から良性、悪性の判断が可能となります。このような組織生検は、NETがんの確定診断ができる唯一の検査になります。

 

 

超音波内視鏡検査(Endoscopic Ultrasonography:EUS)

 

疑わしい腫瘍の位置を正確に突き止めるために消化管のなかから超音波による検査を行うために使用します。胃や腸のなかの空気や腸壁を避け、主に上部消化管、大腸、膵臓・胆道で使われます。病理検査のために超音波内視鏡ガイド下穿刺(Fine Needle Aspiration:FNA)で腫瘍の組織を採取することができます。

 


ワイヤレス・カプセル内視鏡検査(Wireless Capsule Endoscopy)

 

小腸は、胃から十二指腸へと続き、大腸につながる消化管で、口からも肛門からも距離があるために従来の内視鏡では観察が難しいとされていました。カプセル内視鏡の登場により、小腸の診断と治療が進歩してきています。水と一緒に小さなカプセルを飲み込むと、消化管内を移動しながら、小腸の粘膜をカプセルに内蔵されたビデオカメラが撮影し、画像が記録されていきます。これらの画像は、無線によって患者のウエストに取り付けられたデータレコーダに送信されます。約8時間後、カプセルが排泄されます。記録されたデータはコンピュータにダウンロードされ、そこで閲覧、編集および記録されます。小腸の病気が疑われるときにつかわれる非侵襲的な検査です。

 

症状はさまざまです

 

NETがんの症状は、位置および生物学的特性に依存して変化します。多くの場合、症状は他の一般的な病気の症状に似ています。初期の症状には漠然とした疲労や消化不良の苦情が含まれている場合もあれば、また、症状が全くないこともあります。いくつかの典型的な症状は次のとおりです。

 

■腸カルチノイド

  • 腸閉塞症
  • フラッシング
  • 下痢
  • 腹痛
  • 喘鳴

 

■気管支カルチノイド

  • 喘鳴
  • 血まみれの痰

 

■膵臓NET

  • 上腹部の痛み
  • 慢性潰瘍疾患
  • 断続的な低血糖
  • 発疹
  • 糖尿病
  • 下痢

 

NETのがんを診断するのに役立つ画像診断はどれですか?

 

患者に複数の画像検査をうけさせることもあります。医師は、自分が必要とする特定の画像検査をオーダーしますが、これは病気の段階と画像検査の理由に応じて変化する可能性があります。異なる画像検査を使用する理由は次のとおりです。

  • スクリーニング
  • NETの疑いのある患者の原発腫瘍を検出する
  • 病気の程度を評価する
  • 治療に対する応答の評価
  • 最初の診断および/または治療後のフォローアップ

 

注:標準的な画像検査セットはありません。各患者は異なる検査の組み合わせを受ける必要があります。これらの検査についてご不明な点がありましたら、医師/医療チームと相談してください。

 

ソマトスタチン受容体シンチグラフィー(Somatostatin Receptor Scintigraphy: SRS)

 

SRSは、オクトレオスキャン(OctreoScan®)とも呼ばれていて、NETがんが、ホルモンを産生したり、ホルモンに感受性をもつ(受容体がある)特徴を利用している。オクトレオスキャンは、そのソマトスタチン受容体に結合するソマトスタチン類似体に放射性物質を付けた薬剤を投与して、受容体の分布を画像化する検査です。神経内分泌腫瘍の特徴であるソマトスタチン受容体の分布を画像で診断する検査です。ソマトスタチン受容体シンチグラフィー(Somatostatin Receptor Scintigraphy: SRS)とも呼ばれています。原発、転移・再発の診断などに使われていますが、PRRT療法など、ソマトスタチン類似物質に放射線物質を結合させた治療法の適応判定にも用いられています。オクトレオスキャンでは、ソマトスタチンに化学的に放射性物質を結合した薬剤を静脈注入し、その後24時間後に放射性物質の感受性を用いて画像上の分布を観察します。これらのスキャンは、膵・消化管神経内分泌腫瘍(GEP-NET)の約80〜90%を見つけることができますが、PET検査などの画像診断がさらに必要になる場合もあります。

 

CTスキャン(Computer Tomography)

 

CTスキャンは特殊なタイプのエックス線装置です。 CTスキャンは、エックス線が正常な組織と腫瘍は通過しやすさが異なることを利用して画像を作り出しています。しかし、小さな腫瘍や正常部位とのエックス線透過性がほとんど変わらないがんもあるため、CT検査で検出が困難なことがあります。そこで、造影剤を用いることによって、これらの腫瘍の位置と大きさも明確に検出できるようにしています。また、定期的にスキャンすることにより、腫瘍増殖の速度および腫瘍が治療にどのように応答しているかについてより詳細に調べることが可能になります。

MRIスキャン(Magnetic Resonance Imaging)

MRI(スキャンを使用して腫瘍の位置を特定することができます。正常組織と病変組織を区別できる軟組織画像を作成するために、X線の代わりに磁気が使用されます。このようにして腫瘍が特定された場合、それがどのタイプの腫瘍であるかを確認するためにさらなる検査が必要となることがある。


PETスキャン(Positive Emission Tomography)

 

ポジティブエミッショントモグラフィー(PET)スキャンは、身体内の機能的プロセスの3次元画像を生成する核医学イメージング技術である。 FDG-18を体内に注入すると、FDG-18はグルコースがエネルギーとして使われる場所に移動し集積する性質があります。がんは、正常組織とは異なる方法でグルコースを使用するために画像上に浮かび上がります。また、グルコースをエネルギー源とする組織(例えば、脳)にも集積が見られます。PETスキャンは、通常、腫瘍の大きさ、位置およびその状態を3次元画像として作り上げるためにCTスキャンと組み合わせて使用されます。

PETスキャナは非常に高価であり、限定された数の病院にしかありません。従って、患者がPETスキャンをうけるためには別の病院に行く必要があるかもしれません。がん患者の誰もがPETスキャンを受ける必要はなく、他の種類の検査やスキャンがより適切かもしれません。

 

MIBGシンチグラフィー

 

MIBGシンチグラフィーは、ヨウ素-123-meta-iodobenzylguanidine-MIBGと呼ばれる放射性物質を利用した核医学スキャンです。放射性物質は、あなたの腕の静脈に注入されます。この123I-MIBG(メタヨードベンジルグアニジン)は、ノルエピネフリンとよく似た物質です。ノルエピネフリンは交感神経終末から放出される神経伝達物質で、副腎髄質からもホルモンとして血中に分泌されます。これはエピネフリンと共に、交感神経系を動かし、心拍を増加させ、脂肪からエネルギーを放出し、筋肉の反応を増強します。123I-MIBGは、褐色細胞腫(腎臓の表面に位置する副腎のまれな腫瘍)および神経芽細胞腫(神経組織に影響を及ぼす腫瘍)を含む副腎髄質や交感神経から発生した腫瘍に集まることから、これらの腫瘍の診断に使われます。

骨シンチグラフィー

骨シンチグラフィーは、全身をスキャンし、骨転移の診断に使われます。骨は形を維持しながらも常に新しい骨組織に置き換わっています。がんが骨に転移すると骨造成のバランスが崩れるために検出されやすくなります。まず骨シンチグラフィーの放射性物質の注射を行い、薬が全身に浸透する注射後3時間ころから約30分程度の撮影を行います。がんが骨に転移しているかどうかは、治療を進めるうえで重要な情報です。

 

心超音波検査(心エコー検査)

 

カルチノイド腫瘍は、セロトニンおよびタキキニンと呼ばれる化学物質を血流に放出し、これが心臓に移動して心臓弁に影響を及ぼす可能性があります。心不全の診断と重症度評価に血中BNP濃度が計測されています。BNPの前駆体であるNT-proBNPの測定も行われています。中腸カルチノイドと診断された場合、医師はNT proBNP血液検査を行うことがあります。この検査の結果が上がった場合は、心臓を検査するために心エコー検査を受けます。少量の滅菌水が静脈に注入され、これが心臓を回るときに描写されます。結果に応じて、さらに2つの調査が必要になる場合があります。

経食道超音波検査(経食道心エコー): 心臓の裏側である食道(心臓のすぐ背中側)から観察していくという検査方法となります。この経食道超音波検査では心臓を裏側から観察するため、通常の検査では見えない部位、心臓の状態をより詳細に検査することが可能となります。心臓内に血栓が有るか無いか、また心臓の弁の動きや形態、そして大静脈の大きさやその形などを調べることができます。
心臓カテーテル検査: 合成樹脂でできた細く軟らかい管、カテーテルを脚の付け根や手首の動脈から体の中に入れ、血管に沿って先端を心臓までもっていき、心臓の働きや病気の種類・重症度を詳しく調べる検査です。例えば、心不全・心臓弁膜症・先天性心疾患などでは、心臓の圧や血液の流れ具合を調べたりします。また狭心症や心筋梗塞では、血管に狭い所やつまった所がないかなどを調べます。

 

 

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欧米のNET診療ガイドラインをもとにして国際標準NET医療を紹介するために書かれています。

日本のガイドラインとは異なる場合がありますのでご注意ください。

Copyright(c) all rights reserved 米国および日本の著作権ポリシーに則っています

Source: International Neuroendocrine Cancer Alliance, New York, USA

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