国内ニュース:中医協 がん遺伝子パネル検査の保険適用56万円で了承 がんゲノム医療の扉開く!
2019年5月30日
中医協は5月29日の総会で、がん遺伝子パネル検査2製品について56万円(5万6000点)で保険適用することを了承しました。ゲノム検査は、一度の検査で、複数の遺伝子変異を網羅的に把握できる特徴があるもので、保険適用は6月1日の予定とのことです。これまで立ち遅れていた「がんゲノム医療」が日本でもはじまる制度、医療体制がつくられてきました。
保険適用は中外製薬とシスメックス社の2製品で、Foundation One CDx(ファンデーションワン)がんゲノムプロファイル(中外製薬)、Onco Guide NCC オンコパネルシステム(シスメックス)の2製品。これらについては、詳しく説明していきます。
米国パンキャン本部では、米国で普及しているFoundationOne CDxを使用してきました。このがんゲノムパネル検査の特徴は、FDA承認された17の分子標的薬を使うために必要なコンパニオン診断がついていること、また、免疫療法に関連したマイクロサテライト不安定性(Micro-Satellite Instability:MSI)と腫瘍遺伝子変異量(Tumor Mutational Burden:TMB)も検査する点が特徴となります。ONCOGuide NCC音ぽパネルシステムは、FoundationOneCDxのように体細胞の遺伝子変異を検査しますが、同時に生殖細胞系遺伝子変異(Germline Mutation)も検査します
資料1:がんゲノム医療に向けた取り組み、厚生労働省
これらの検査は、個別化医療を実現するために必要な遺伝子変異を網羅的に把握できるのが特徴で、がんゲノム遺伝子変異に基づいた治療の選択肢を提示し、選択するゲノム医療の方針をサポートします。
■保険適用は中外製薬とシスメックス社の2製品
2018年12月に承認された下記の2製品が今回保険償還されました。
▽FoundationOneCDxがんゲノムプロファイル(中外製薬):324の遺伝子変異、さらに4がん種、6遺伝子の変異を検出し、特定の医薬品の適応の判定に用いる“コンパニオン診断機能”があります。ただし、米国同様、標準治療となっている分子標的薬の可否を判断するのに用いるコンパニオン診断は、がん遺伝子パネル検査とは実施時期も異なるとされています。そのため、保険適用上は、がんパネル検査の点数では算定できず、非小細胞肺がん、悪性黒色腫などの診断として算定することとされています。
▽OncoGuideNCCオンコパネルシステム(シスメックス):OncoGuideNCCオンコパネルシステムは114の遺伝子変異を一度に調べることができます。NCCのオンコパネル検査では、がん細胞の中だけで起こっている遺伝子変異(体細胞遺伝子変異)を114個と免疫チェックポイント阻害薬の治療効果に影響を与える腫瘍変異負荷(TMB)の評価、さらに患者さんが生まれながらにもつ遺伝子変異(生殖細胞系列変異:Germline Mutation)とを区別できることから、遺伝的に発生した腫瘍の診療に役立つ結果が得られるとしています。腫瘍変異負荷(Tumor Mutational Burden:TMB)は、遺伝子変異の量が増えるほど免疫療法が奏功しやすくなることから、免疫チェックポイント阻害剤を使用する前に検査されています。
■対象となる膵臓がん患者
がん遺伝子パネル検査は、標準治療がない、もしくは終了となった固形がん患者のうち、主治医が化学療法の適応となる可能性が高いと判断した患者に対して、実施することができるとされています。膵臓がんの場合、1次治療は、FOLFIRINOXあるいはGEM+nab-PTXとしてガイドラインにも載っていますが、2次治療はエビデンスがなく、標準治療は確立しているとは言えません。転移性膵臓がん患者さんの1次治療の治療可能期間の中央値は約6か月と短いため、パンキャンジャパンでは、 1次治療が終了する前にがん遺伝子パネル検査が受けられるよう、早急な対応を厚生労働省に求めていきます。関連した署名活動も行いますのでご支援ください。
資料2:がんゲノム医療に向けた取り組み、厚生労働省
■がん遺伝子パネル検査が受けられる病院
がん遺伝子パネル検査が受けられるところは、がんゲノム医療中核拠点病院などに限定されてのスタートとなります。がんゲノム医療中核拠点病院は、厚生労働省により全国の11施設となります。それに連携した医療機関もあります。厚生労働省は将来的には全国どこでもがんゲノム医療を提供できる体制を構築することを目指していますので、がんゲノム医療拠点病院 30施設が今秋に指定される予定です。がんゲノム医療の体制整備をこれから徐々に進んでいきますが、膵臓がん患者は待てないので、パンキャンジャパンでは、早急な体制構築を求めていく予定です。
検査に必要な検体は、EUSなどを使用して採取して、ラボに送付されます。そのレポートが返ってくると、がん薬物療法の専門家などで構成されるエキスパートパネルで解析結果をもとにして、治療の選択肢を確認したレポートを作成していきます。担当医がこれを活用して、患者に検査結果を説明し、治療に当たることになります。これまでは、EGFR遺伝子やBRCA遺伝子など、コンパニオン診断を使用してきた肺がん、乳がんなど一部のがん種をのぞいては、ゲノム医療はこれからのことになりますので、普及には時間がかかることが懸念されています。
パンキャンジャパンでは、2014年より米国パンキャン本部からゲノム検査をベースとした膵臓がんの遺伝子変異の蓄積、患者の遺伝子変異にマッチした治療薬の投与と臨床的なアウトカムを調査してきたリン・マトリジアン博士を7月に招聘し、日本膵臓学会と日本臨床腫瘍学会、国立がん研究センター中央病院において、米国における膵臓がんのゲノム遺伝子検査とゲノム医療の実績、課題などについて医療関係者を中心に説明してもらう予定です。
今後、パネル検査の保険適用により、検査コストの低減、時間の短縮、関連した臨床試験の普及などが期待されています。膵臓がん患者により奏功する治療薬を迅速に提供できるよう、パンキャンジャパンでは医療関係者とともに政策提言活動を進めていきます。
以上、
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■関連記事
「遺伝子パネル検査は56万円、初の保険適用、患者1人1回
がんゲノム医療中核拠点病院等に限定、検査結果の「C-CAT」への提出も」
2019年5月29日 m3.com
https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/679073/
■関連HP
●Foundation One CDx がんゲノムプロファイル(中外製薬)
https://www.chugai-pharm.co.jp/…/de…/20190319150000_830.html
●Onco Guide NCC オンコパネルシステム(シスメックス)
http://www.info.pmda.go.jp/…/480585_23000BZX00398000_A_01_0…
■関連記事 *ニュース動画あり
「[記事] NHKニュース「がんゲノム医療 本格的に開始へ 遺伝子検査に医療保険適用」」
https://bit.ly/2Wiu4wP
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