国内ニュース:臓器横断型新薬の第三弾 エヌトレクチニブの販売開始

~NTRK融合遺伝子陽性の膵臓がん、胆管がん、神経内分泌腫瘍、肉腫などの固形がんを対象~

2019年9月4日

2018年12月18日に承認申請され、厚生労働省より先駆け審査指定制度の対象品目に指定され、本年6月18日、世界で初めての薬事承認を日本で取得したエヌトレクチニブ(商品名:ロズリートレクカプセル、中外製薬)は本日薬価収載され、即日発売開始されました。エヌトレクチニブはNTRK融合遺伝子陽性の固形がんに対する国内で初めての治療薬となります。この薬剤は、難治性がん(膵臓がん、胆菅がん、非小細胞肺がん等)、希少がん(神経内分泌腫瘍、肉腫、GIST等)を含む成人だけでなく、小児がんにも使用できることが特徴です。

NtrectinibWaterFallPlot

図:エヌレクチニブを使用したがん患者のがんの縮小率を示したWaterFall Plot。右端の5人の患者のがんは100%縮小したことを示している。左端の3人の患者のがんは15%~25%程度増大したことを示している。

米国食品医薬品局(FDA)より画期的治療薬(Breakthrough Therapy)に指定され、本年8月15日に米国でも承認されました。また、欧州医薬品庁(EMA)よりPRIME(PRIority MEdicines)に指定されています。この薬剤は、がん腫を問わずに使用できる抗がん剤で、がん種横断的な使用(Tissue Agnostic)がFDA承認された第三番目の薬剤となります。

■NTRK融合遺伝子陽性がんについて
 NTRK融合遺伝子とは、NTRK遺伝子(NTRK1、NTRK2、NTRK3、それぞれTRKA、TRKB、TRKCタンパク質をコードする)と他の遺伝子(ETV6、LMNA、TPM3など)とが染色体転座の結果、融合してできる異常な遺伝子です。NTRK融合遺伝子から作られる融合TRKにより、がん細胞の増殖が促進されると考えられています。NTRK融合遺伝子の発生は非常に稀ではありますが、成人や小児の様々な固形がんや肉腫等で確認されています。NTRK融合遺伝子陽性の固形がんは、膵臓がん、胆管がん、神経内分泌腫瘍、、消化管間質腫瘍(GIST)、肉腫、大腸がん、虫垂がん、婦人科がん、非小細胞肺がん、唾液腺がん、乳がん、悪性黒色腫、および甲状腺がんなどで確認されています。

■エヌトレクチニブ(商品名:ロズリートレク)について
 エヌトレクチニブは、ROS1融合遺伝子陽性の局所進行または転移性非小細胞肺がん、またはNTRK1/2/3融合遺伝子陽性の局所進行または転移性固形がんを対象とした薬剤です。エヌトレクチニブは、ROS1(c-rosがん遺伝子1)およびTRK(神経栄養因子受容体)ファミリーを強力かつ選択的に阻害する経口投与可能なチロシンキナーゼ阻害剤であり、脳転移巣への作用も期待されています。エヌトレクチニブは、ROS1およびTRKキナーゼ活性を阻害することにより、ROS1またはNTRK融合遺伝子を有するがん細胞の増殖を抑制します。

■NTRK融合遺伝子の検査について
 NTRK融合遺伝子の検査は、がん遺伝子パネル検査として2018年12月27日に承認された「FoundationOne® CDx 」がコンパニオン検査として、本年6月26日に厚生労働省より承認、保険償還されています。このパネル検査について、詳しくは、こちらを参照ください。

■ゲノム医療について学ぶ医療セミナーについて
 2019年9月21日(土)新薬承認が進む膵臓がんのゲノム医療について、患者・ご家族・医療関係者を対象として、ゲノム医療のセミナーを開催します。
膵臓がんの遺伝子変異を調べ、それにマッチした治療法を投与された患者は、標準療法と比較して生存期間が2倍に延長したことがASCO学会にて発表され、転移性膵臓がん患者には「がん遺伝子パネル検査」を受けることを推奨すると米国NCCN診療ガイドラインが改訂されました。日本では「膵癌診療ガイドライン2019年版」がでたばかりで、次の改訂は3年後になります。エヌトレクチニブが承認され、販売開始となり、膵臓がん患者さんにも使えるようになりましたが、膵臓がん診療ガイドラインでその新薬の使用方法が説明されないと患者は治療が受けられません。そのような状況のなか、膵臓がん患者はどうしたらゲノム医療が受けられるようになるのか。そのような質問に答えるために開催されるのがこのセミナーです。残りの席数が限られてきていますので、早めの申し込みをお願いします。

 

参考資料:
エヌトレクチニブの発売の中外製薬のプレスリリース。
https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20190904150000_874.html

メディアに向け中外製薬の説明会資料
https://www.chugai-pharm.co.jp/ir/reports_downloads/presentations.html#sec_90

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