letswin ai early diagnosis dr rosenthal

【期待されるサイエンス】人工知能と膵臓がんの早期発見

著者 マイケル・ローゼンタール博士 

2020年12月3日

人工知能(AI)は、もはや空想科学小説のようなものではありません。車で通勤する人が乗り合いできるようにライドシェアのアプリがでていますが、そのアプリは使用されていますか?それはAIを利用しています。(米国では、現金の代わりに小切手を使いますが、頂いた小切手を自分の口座に預金するための)「モバイル小切手預金」アプリがあります。これもAIを利用しています。メールスパムフィルターでさえAIを使用していますが、重要な情報が確かな理由もなくスパムフォルダーに仕分けされることがあるのも事実です。

膵臓がん患者にとってAIに対する真の期待は、膨大な量のデータを消化して解析し、最も熟練した医師でさえも見逃す可能性のあるパターンを特定できる、その驚異的な能力にあります。総合すると、これらのAIの特性は、治癒の可能性のある手術をするには遅すぎると診断されることが多い膵臓がんの早期発見への道を開く可能性があります。ただし、AIの可能性を最大限に活用する方法を見つけるには、医学、コンピューターサイエンス、エンジニアリング、数学、業界、政府などにまたがるスキルセットが必要です。

AIの現状と、早期発見を達成するために科学がどこに行く必要があるかをよりよく理解することは、ケナー家族研究基金(KFRF)とアメリカ膵臓学会(APA)によって開催された「AIと膵臓がん早期発見バーチャルサミット」の焦点でした。

サミットでは、AIの専門家が一堂に会し、早期発見に関する現在の取り組みと課題について話し合いました。議論された主題分野には、早期発見、AIと機械学習の進歩、問題、展望、AIと早期発見における現在の取り組み、コラボレーションの機会、政府、業界、患者団体からの洞察が含まれていました。

サミットの目標は、これらのさまざまな専門分野を組み合わせて、AIと機械学習を使用した膵臓がんの早期発見のための「リスク層別化モデル」を開発することです、とKFRFの創設者であるバーバラ・ケナ―博士は説明します。彼女は、国立がん研究所(NCI)の膵臓癌コンソーシアム同盟、膵臓がん検出コンソーシアム(国立衛生研究所(NIH)が後援)、および米国パンキャン本部(PanCAN)の早期発見イニシアチブの支援者でもあります。

「AIと機械学習がヘルスケアでより頻繁に適用されていることを考えると、現在のAIの状況の概要を説明するサミットを開催する時期であると判断し、膵臓がんの分野にもAIの人々を関与させたいと考えました。膵臓がんの検出と治療に携わる人々とAI空間を調べ、早期発見の目標を達成するために何が必要かを理解するのに役立てています」とケナー博士は言います。 「サミットはこれを達成するのに非常に成功しました。そして今、それは次のステップに進んでいます。」

■考えられるすべてのツールを活用する

次のステップは、医師科学者のマイケルローゼンタール博士(ダナファーバーがん研究所とブリガムアンドウィメンズ病院の放射線診断医、およびハーバード大学医学部の放射線科助教授、すべてマサチューセッツ州ボストン市に所在)にとり、早すぎるということはありません。ローゼンタール博士は、膵臓がんを中心とした消化器がんの画像​​診断のスペシャリストです。

「私は放射線科医であり、コンピューターサイエンスの見方に偏りがある科学者です。私の博士号はコンピューターサイエンスでしたから。」と、AIと早期発見サミットで「現在の取り組み」ディスカッションの共同リーダーを務めたローゼンタール博士は言います。ローゼンタール博士は、膵臓がんがAIの優れた標的であるということはそれほど多くないことは明らかです。「むしろ、このがんにうまく対処するために入手できるすべてのツールが必要です」。「AIは複雑さに優れており、膵臓がんは非常に複雑な病気です」と彼は付け加えます。

早期発見という点では特に複雑です。初期の膵臓の異常は微妙であり、これらの癌のいくつかは急速に成長する可能性があるため、他の臓器と比較して悪性腫瘍を早期に発見することは困難です、とローゼンタールは言います。さらに、黄疸や体重減少などの症状は、早期発見に繋がる症状ではなく、腫瘍が成長して広がるとしばしば現れるものです。

これらの困難を考えると、膵臓がんは早期発見が最も難しい主要ながんです。 「そこでAIが登場する可能性があります」と彼は説明します。 「私たちは2つの分野で本当に前進する必要があります。 1つ目は、AIを使って膵臓がんの特徴を見つける方法をよりよく理解することであり、研究者がその分野でどのように前進しているかを見るのは非常に印象的でした。次に、これらのAIツールを適切な人口で使用していることを確認する必要があります。」

■アルゴリズムの力

1つのアプローチは、アルゴリズムを使用して大量のデータからパターンを見つけるために、AIのサブセットの一種である「ディープラーニング」を使用することです。 「データは単なる数字ではありません」とローゼンタール博士は言います。 「膵臓がんの発症や早期診断に関連する可能性のある、何かが患者に起こっていることを示唆する可能性のある重要なパターンや潜在的な傾向を見つけるのに役立つ、コンピューターに入力できるものなら何でもかまいません。」

たとえばメイヨークリニックでは、研究者は、膵臓がんの家族歴のある人など、膵臓がんのリスクが高い人を体系的に特定するためのアルゴリズムを構築しています。他の場所の科学者も、遺伝的変異と新たに発症した糖尿病を探します。ダナファーバーがん研究所では、研究チームは、臨床記録と大規模で多様な患者集団データセットから収集された画像の深層学習分析を使用して、一般集団の膵臓がんのリスクが高い個人を特定することにより、「リスク評価モデル」も開発しています。これらのリスクモデルは、膵臓がんのリスクが高い患者を特定できる実用的なツールにつながり、疾患の予防と早期発見のためのスクリーニングプログラムに登録する必要があります。

「より集中的なサーベイランス(監視)の設定につながるリスク要因を洗い出す研究に非常に期待しています」とローゼンタール博士は言います。 「体組成、血液バイオマーカー、および新たに発症した糖尿病の変化などを調査することにより、膵臓がんを早期に発見できる可能性があります。それを実現するために必要なデータを収集するのに役立つAIシステムがあればいいのですが。」ローゼンタール博士は、できればそれほど遠くない将来に、定期的な研究室での作業と定期的な医師の診察が一部の患者の膵臓がんサーベイランス(監視)につながること、その可能性を考えています。 「患者の体重が少し減り、筋肉量が減少し、一部の検査値が変化している場合があります。これらすべてを単独で使用した場合はフラグが立てられない可能性がありますが、アルゴリズムに基づいてまとめると、重要なパターンが表示されます。これをさらにチェックして、膵臓に何かが起こっているかどうかを確認したいと考えています。」

■画像の解釈

AIは、微妙な変化、つまり最も熟練した放射線科医でさえ見るのが難しい変化について、少なくとも最初は画像を解釈することに特に長けているように思われます。AIの深層学習技術(ディープラーニング)のサブセットは、人間の脳の視覚系を模倣しており、画像の解釈に使用されるAIの最も堅牢な方法です。ディープラーニングの力を活用することは、ハリーポッターの本で有名になったポーションにちなんで名付けられた「フェリックスプロジェクト(FelixProject)」と呼ばれるジョンズホプキンス大学でのもう1つのAI研究の取り組みがあります。まさに、魔法のポーションを飲むと成功はあなたのものになりますの世界です。

「ディープラーニングは、私たちの脳の働きを模倣しています」とローゼンタール博士は言います。 「コンピューターアルゴリズムのレイヤーがあり、それらはすべて相互接続されています。あるレイヤーが情報を取得すると、それを次のレイヤーに送信します。そのため、情報は徐々に合成され、凝縮されていきます。アルゴリズムは、私たちが行う方法で結論を出します。私たちは継続的にデータを分析しますので、取得するデータが多いほど、分析が向上します。」 フェリックスプロジェクトの目標は、CT画像を分析し、疑わしい領域にフラグを立てるソフトウェアプログラムを開発することです。

「放射線科医として、私はこのプロジェクトに本当に期待しています。チームとして、集められたスキルセットの点も非常に多様なこのグループは本当に素晴らしいと言わなければなりません」とローゼンタール博士は言います。 「彼らは、研究室から臨床現場に持ち出す最初のAIグループになるかもしれません。」

■次のステップ

サミットで明らかになったのは、「AIを使用することで、血液ベースのバイオマーカー、遺伝子分析、腫瘍マイクロバイオームなど、幅広い早期発見の研究に役立つ可能性があることです」とローゼンタール博士は言います。

ケナー家族研究基金(KFRF)によると、 この分野での現在の取り組みの概要、イノベーションと機会に関するギャップとアイデアの分析、サミットの会話など、次のステップの概要を説明するホワイトペーパーを提供する、包括的なプレサミットペーパーは、戦略的計画、運用基準の実装、研究の優先順位、および第1段階のイニシアチブなどの実用的な開発に役立ちます。

「膵臓がんは恐ろしい病気であり、私はかなり腹を立てています」とローゼンタール博士は言います。 「現時点では、治療の優れた選択肢がすくないため、患者に最良のチャンスを与えるには、早期発見が重要です。」

「膵臓がんは、私たちは、叩き続けなければならない病気です。そして、AIはそれを支援できるツールの1つです。明らかなことは、サミットの全員が、この病気を早期に、予後の違いを生むのに十分に早い段階で発見する方法を見つけることに尽力していることです。」

 

 

 

 

 (Source:Promising Science-Let's Win Lustgarten Foundation)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<免責事項>この記事は、「期待されるサイエンス」を紹介する目的で書かれています。特定の治療法や薬の使用を推奨するものではありません。ご自身の病状については、担当医とよく話し合ってください。このウェブサイトの情報を利用して生じた結果についてPanCANJapanは一切責任を負うことができませんのでご了承ください。

topmessagedonation001

SliderNAD

膵臓がん National Advocacy Day

膵臓がんになった多くの方が、今、真摯に自分の治療に向き合っています。

 生存率を向上させ、治る病気にするためには、 

  あきらめず、これに力を与え、  

希望をつくり、良いアウトカムをもたらすことが必要です

治るがんにしていくために、多くの力が必要です。多くの関係者が生存率向上に立ち向かっています

今、あなたの力が必要です

膵臓がんをあきらめないために

あなたもこのアドボカシー活動に加わってください

previous arrow
next arrow
Slider