がんとこころのケア
著者は、名古屋市立大学大学院 医学研究科精神・認知・行動医学分野の明智龍男教授。本書は2003年刊行の本だが、全がんの5年生存率が60%を超えた現在に比べ、はるかに生存率が低く、生命を脅かす病だった時期に書かれた、がんと心に向き合う本の1つである。 サイコオンコロジー(精神腫瘍学)は、「心」の研究をおこなう精神医学と、「がん」の研究をおこなう腫瘍学を組み合わせた造語で、1980年代に確立した新しい分野である。著者はがん医療における「心」を扱う専門家として、がんの患者さんの心理状態や心の変遷やどのようなアプローチが可能なのかを、落ち着いた寄り添う言葉で解説している。本書は大きく2つに構成され、1部は、がんと心の関係についてそれまでの研究結果を基に解説され、2部は、患者さんや家族に役立つ知識が紹介されている。how to(どうすればいいか)で端的な対処法を求める方には向かない本かもしれないが、がんという大きなストレスとなる事実を受け止めながら紹介されている様々な処方箋は読む方の参考になると思われる。
NHK BOOKS(日本放送出版協会) 970円+税 明智龍男 著 2003年7月13日刊行 |