ASCO(American Society of Clinical Oncology), Saturday June 5, 2010

2010 David A. Karnofsky Memorial Award and Lecture
“The Last 12 Weeks”

by David D. Von Hoff, MD, FACP
※会員の方は、Von Hoff氏のAACR2010プレゼンテーション(PDF) をダウンロードすることができます。


この講演は過去35年間、私が光栄にもケアをさせていただいた、 フェーズ1臨床試験でともに闘った、勇気ある、博愛的な、最後まで諦めなかった患者に捧げるものである。
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( 一部省略)

小さな抗腫瘍効果でも生存期間を延長(例:Gemcitabine)

「多くの膵臓がん患者は、ゲムシタビンによって痛みが抑えられ、身体状態(KPS)も向上し、楽になった。

 Gem5FU
完全寛解(CR) 0% 0%
部分寛解(PR) 5% 0%


ゲムシタビンも5FUも完全寛解は0%、部分寛解はゲムシタビンが5%、5FUは 0%ではあるが、ゲムシタビンの登場によって全生存期間(OS)中央値は有意に改善した。(OS中 央値5.65ヵ月)
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図1: Median OS(Gem vs 5FU)

進行膵がん患者からがん組織を採取し、治療標的を解析

Immunohistochemistry(IHC) & DNA microarray(DMA)


112人の進行膵がん患者から採取された組織を分析した結果、SPARC (Secreted Protein Acidic and Rich in Cysteine)は、67%の患者において陽性であった。様々な患者から直接採取された腫瘍組織をDMA分析した結果、SPARCは、Melanoma 88%、Pancreas 81%, Breast 67%の患者に過剰発現していることが判明した。その後の研究では、前立腺がん、卵巣がん、胃がん、非小細胞肺がんなど、他のがん種においてもSPARC 発現が認められた。SPARCは、線維芽細胞と強く関連するタンパク質で、osteonectinとしても知られている。間質組織がSPARC陽性の場合は特に予後が悪いこと、またSPARCにはがん組織内にアルブミンを蓄積する作用があることも知られている。また、膵臓がん組織内とそれを取り巻く間質細胞(線維芽細胞)においてSPARCが過剰発現することも解明された。


SPARCに作用する抗がん剤が米国にて承認される

(進行乳がん患者の治療に承認されたナブパクリタキセル)


アルブミンは栄養やパクリタキセルのような水不溶性分子の自然なトランスポーターとして働くたんぱく質である。ナブパクリタキセルは、ふたつのメカニズムによって内因性アルブミン経路を利用している。ひとつは、Gb60(アルブミン受容体)および Caveollin1(カベオラ)を介して血管内皮バリアーを通過するトランスポート(transcytosis)メカニズム。もうひとつは、SPARC によるSPARC豊富な腫瘍、間質とアルブミン・薬剤複合体の結合である。その結果、間質にも腫瘍にもアルブミン・薬剤複合体が集積される。

膵がんを取り巻く繊維性間質のように、外部組織の僅か10%の血管しか存在しない組織に対しては、内因性アルブミン経路は特に有効な可能性がある。
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図2:Endogenous Albumin Pathways

ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法

フェーズ1臨床試験が開始されたと同じ時期に、ジョンズホプキンス大学のマウスモデルグループによって驚くべき研究成果が報告された(Anirban Maitra, et al 2009 ACR NCI EORTC Intl Conference on Molecular Targets and Cancer Therapeutics, Boston MA, Caner Res. Jan 15, 2010)。併用療法はインビボとインビトロの試験で非常に大きな抗腫瘍効果を見せたが、特筆すべき点は、ナブパクリタキセルの投与によって膵がん組織取り巻く間質組織がcollapseした点である。

Maitra氏の研究グループは、膵臓発がんマウスモデル(Panc265 Panc163)を使い、Gem単剤、nab-Paxlitaxel単剤、併用療法の抗腫瘍効果を比較試験した。
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図3(Maitra et al., AACR-NCI-EORTC Molecular Targets, Boston 2009)


その結果、この併用療法(Gem+Nab-pac)は、膵がん組織を取り巻く繊維性間質をcollapseさせたことが判明した。


フェーズ2:ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法の臨床試験結果 良好な結果がみられたことからフェーズ2臨床試験が開始された。


4 Week Cycle:
125mg/㎡ ナブパクリタキセル + 1000mg/㎡ ゲムシタビン Weekly静脈注射x3

膵がんの増殖と生存をサポートする繊維性間質をcollapseさせるナブパクリタキセルとゲムシタビンの併用療法は、膵がん患者の生存率を有意に延長した。
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図4:Percent improvements in CA19-9


78%の患者において、腫瘍マーカーCA19-9に50%以上の減少がみられた。20%以上のCA19-9値の減少は、予後の改善につながることがKo氏のグループによりすでに報告されている。(Ko et. Al. J.Clin.Oncol.24:379 2006) この値と比較できる最善の臨床試験結果は、ゲムシタビン単剤投与の臨床試験のときにでた、36%の患者でCA19-9値に25%以上の減少が見られたときであった。(Stethanapolis et.al.Brit.J.Cancer 95:587-592,2006)

通常の臨床試験では、完全寛解する患者は1人もでないという状況のなかで、この試験ではすでに完全寛解した患者が5%も存在することは素晴らしいことである。

また、フェーズ2推奨投与量 125 mg/㎡のナブパクリタキセルと1000 mg/㎡のゲムシタビンで治療した31人の患者 のOS中央値は12.2カ月で、ゲムシタビン単独と比べOSは2倍に延長していること、全員のCA19-9も減少したことである(下記参照)。
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図5:125mg nab-Paclitaxel Group ( CA19-9 )


また、Nab- paclitaxel+Gemの併用療法では、Gem単剤の3倍という非常に高い抗腫瘍効果が認められたことから、一部の切除不能患者にとってはダウンサイズとともに手術適用の可能性もでてきたことを意味する。
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図6:Tumor regression comparison (%)

 

 GemGem+nabPaclit
完全寛解(CR) 0% 5%
部分寛解(PR) 5% 24%
全生存期間(OS) 5.65ヵ月 12.2ヵ月

まとめ

進行性転移性膵がんの第一 選択治療として、ナブパクリタキセル+ゲムシタビンの併用療法 vs ゲムシタビン単独のフェーズ3比較試験の登録が現在進行中である。

参考資料:
2010 David A. Karnofsky Memorial Award and Lecture “The Last 12 Weeks” David D. Von Hoff, MD, FACP American Society of Clinical Oncology, Saturday June 5, 2010

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