Hijioka Susumu MD head shot

【参加しよう!】早期膵がん発見を目指したサーベイランス試験(Diamond study)

著者 肱岡 範
国立がん研究センター 中央病院肝胆膵内科

転移性膵臓がんの5年生存率は僅か1%と最も厳しい予後になっています。ひとつの原因は発見が遅れることです。そこで、国立がん研究センター中央病院では、膵臓がんの危険因子を持つ方を対象とした早期発見プロジェクトを始めました。対象は、家族性膵がん家系もしくは遺伝性腫瘍症候群を有する方となります。登録された方を対象にシリーズの検査を定期的に続けることで膵臓がんを早期発見することが目的となります。特にご家族に2人以上の膵臓がん患者がいる方、または40代、30代で膵臓がんに罹患した方のいるご家族は、ぜひこの試験にご参加ください。

 

■背景と目的

 膵がんは、内科的治療で完全に治すことは難しく、切除が唯一治癒の期待できる治療です。しかし、膵がんは、医学の進歩した今でも5年生存率は7.9%と報告されており、極めて予後不良の疾患であります。膵がんを早期に発見し、切除可能な段階で診断できる患者さんを増やすことが、膵がんの生存率を改善させる有効な手段と考えられています。したがって膵がんの克服にも、早期発見に役立つ診断法や検診システムを確立させることが大きな課題となっています。このためには、膵がんを発症するリスクが高い因子を持った方(高リスク群)に対して定期的な検診(サーベイランス)を行うことが有効と考えられます。

■研究の対象となる方

この研究の対象となる方は、家族性膵がん家系もしくは遺伝性腫瘍症候群を有する方で、膵がん発症のリスクがある一定以上(膵がん発症のリスクが一般人の5倍以上を想定)の方を対象としています。具体的には下記に示す方々が対象です。
 年齢は、50歳~75歳を基本としていますが、40歳以下で膵がんを発症したご家族がいらっしゃる方や膵がん発症のリスクがより高い方は、40歳以上も対象となります。

 

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■サーベイランスの方法、期間

 膵臓の精密検査を、血液検査の他、造影CT検査、MRCP検査、超音波内視鏡(EUS)検査を用いて、年2回、最短5年間(最長15年間)行います。
 初回検査は、医療面接、腫瘍マーカー(CEA、CA19-9)、アミラーゼ、HbA1cを含む血液検査および画像検査を行います。画像検査は、初回は、MRCPとEUSの両者を行い、膵病変の有無を確認します。これは保険診療として行いますただし、現在の本邦の診療保険制度は、何らかの異常所見がないと保険診療として検査を行うことが認められていませんので、これらの検査で何ら異常所見を認めない場合は、以降の検査は自費診療となります)。
 その後、6か月毎に血液検査および画像検査として、MRCP→EUS→MRCPと交互に行っていきます。初回および6か月毎の検査において、膵がんや外科治療もしくは薬物治療を必要とする膵腫瘍が見つかった場合には、サーベイランスはそこで中止し、診断確定後に、それらの治療を行います。一方、定期的な検査の結果、経過観察可能な膵疾患や胆道疾患などEUSやMRCPによる定期チェックが妥当と判断される疾患が見つかった場合は、引き続き6か月毎に画像検査として、MRCP→EUS→MRCPと交互に行っていきます。サーベイランスの途中で精査が必要な病変が見つかった場合には、保険診療による精査を行います。
 本研究は、2019年4月から2035年3月まで行う予定です。また、参加していただく人数は、400人の登録を予定しています。

 

■参加方法


 表のように全国68施設が本研究に参画しています。もし参加をご希望される場合は、右記のご施設もしくは肱岡先生までお問い合わせください。

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■おわりに

 本研究への参加によって、早期に膵疾患が発見され、根治的な治療を享受できる可能性があります。早期に膵がんを見つけることは、多くの原石からダイアモンドを掘り当てるのにも似た難しさがあります。しかし、高リスクの方に、丁寧にしっかりとサーベイランスを行っていけば、膵がんを早期に発見し完治に持ち込むことができるはずです。本研究へのご協力、ご参加をぜひ検討ください。

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膵臓がん National Advocacy Day

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 生存率を向上させ、治る病気にするためには、 

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治るがんにしていくために、多くの力が必要です。多くの関係者が生存率向上に立ち向かっています

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膵臓がんをあきらめないために

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