PanCAN Increasing survival rate 2023

米国の早期発見イニシアチブ ~膵がん切除率向上を目指して~

PanCANは、膵臓がん患者の生存率向上を目指して1999年に設立された非営利団体です。その活動の一環として、2018年より早期診断の強化と手術適応患者の増加を目指す「早期発見イニシアチブ」に取り組んでいます。以下は、このイニシアチブの現状と今後の展望についてまとめたものです。

▪進捗と成果

  • PanCAN 早期発見プロジェクト: 2018年に開始された大規模な研究プロジェクトで、成人発症型糖尿病の患者を対象に膵臓がんのスクリーニング検査を実施し、早期診断の可能性を検証しています。糖尿病の症状がでた患者の約1割が膵臓がんが原因とされていることから、米国で1万5000人以上の糖尿病と診断された患者を登録しており、2024年に preliminary な結果が発表される予定です。このプロジェクトの目標は、早期発見につなげて手術適応率を向上することです。
  • PanCAN Know Your Tumor® プログラム: 膵臓がん患者が診断時にがん遺伝子パネル検査を受け、ゲノム医療を含む治療選択肢についての理解を深めるための教育プログラムです。1万人を超える患者さんにパーソナライズされたゲノム医療を受けるために必要ながん遺伝子パネル検査の情報とゲノム医療の選択肢に関するリソースを提供し、膵臓がんのゲノム医療に関する患者のエンパワーメントにつながっています。
  • 政策提言活動: 膵臓がん研究への資金増額、早期発見ツールの開発、スクリーニングおよび治療における保険適用範囲の改善など、政策改革を通じて膵臓がん対策の改善を積極的に提言しています。2010年に上院と下院で支持された「膵臓がん研究教育法案(Pancreatic Cancer Research & Education Act)」の提出もその一環です。この法案は、2013年1月にオバマ大統領によって署名され「難治性がん研究法(Recalcitrant Cancer Research Act)」として成立しました。その結果、膵臓がん患者の9割に発見され、医薬品開発は特に難しいといわれたKRAS遺伝子変異を研究する「RASセンター」が創立され、20憶円の研究予算が割り当てられ、膵臓がん研究を大きく前進させました。

The White House

▪現在の課題

  • 低い生存率: 膵臓がんは依然として生存率が12%と非常に低い悪性腫瘍です。早期診断は生存率向上に欠かせませんが、10㎜以下の膵臓がんを見つけるためには超音波内視鏡検査(EUS)が必要と言われています。日本のようにEUS専門医へのアクセスがよくないため、ほとんどの場合、大きくなり有症状な状態(進行期)で診断されています。
  • 効果的なスクリーニングツールの不足: 乳がんや大腸がんとは異なり、膵臓がんには確立されたスクリーニングにつかえる血液検査が存在しません。PanCAN 早期発見イニシアティブでは、このギャップを埋めるためのバイオマーカーの発見も目標として研究を進めています。
  • 医療格差: 広大な米国では公共の交通機関が日本ほど発達していないため、地域により医療アクセスの格差があり、診断と治療の遅れに繋がり、さらに膵臓がんの手術切除の可能性を減少させています。

▪今後の展望

  • 継続的な研究: PanCAN は早期発見イニシアチブをはじめとする研究活動を継続し、効果的なスクリーニングツールの開発を支援し、パーソナライズされた治療戦略の開発と普及を目指しています。
  • 啓発活動と教育: 膵臓がんの症状やリスク因子に関する認知度を高めることで、早期受診を促し、早期診断の可能性を高めることに努めています。
  • パートナーシップ構築: 他の膵臓がん患者の支援団体、政府機関、研究者との連携は、膵臓がん研究とケアの進歩において極めて重要です。

▪まとめ

PanCAN本部の膵臓がん早期発見イニシアチブは、米国における膵臓がんの早期診断と手術切除率向上に向けた大きな一歩です。課題は残っていますが、継続的な研究、政策提言、啓発活動を通じて、この悪性腫瘍の生存率向上につなげていくことが期待されます。

この記事に興味のある方はPanCAN本部のウェブサイトもご参照ください: https://secure.pancan.org/: https://secure.pancan.org/

 

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