survivorprofile Kay Kays

サバイバーストーリー:他の人々へのインスピレーション

30年間膵臓がんサバイバーのケイ・ケイズさんは、がん研究を進め、この病気に対する認識を高める啓発のための活動しています。

リンゼイ・コンケル・ニーボア著


2024年3月21日

1994年、44歳のケイ・ケイズが膵臓がんの診断を受けたとき、彼女には治療の選択肢も情報もほとんどありませんでした。手術可能な膵臓がんの標準治療は手術だけでした。化学療法の使用は限られており、生存率を改善する効果はほとんどありませんでした。文書や初期の癌のウェブサイトには、この病気についての簡単な言及しかありませんでした。最も印象的だったのは、生存者の少なさでした。

1994年当時、膵臓がんで診断後5年以上生きた人はほとんどいませんでした。5年生存率は3%で、ほとんどの人が数ヶ月で死亡していました。膵臓がんのほぼすべての症例は、膵臓以外に転移してから診断され、有効な治療ができないほど手遅れになっていたと1999年に設立された米国Pancreatic Cancer Action Network(PanCAN:パンキャン)の代表であるジュリー・フレッシュマン氏は言います。

survivorprofile Kay Kays

サバイバーストーリー:他の人々へのインスピレーション

30年間膵臓がんサバイバーのケイ・ケイズさんは、がん研究を進め、この病気に対する認識を高める啓発のための活動しています。

リンゼイ・コンケル・ニーボア著


2024年3月21日

1994年、44歳のケイ・ケイズが膵臓がんの診断を受けたとき、彼女には治療の選択肢も情報もほとんどありませんでした。手術可能な膵臓がんの標準治療は手術だけでした。化学療法の使用は限られており、生存率を改善する効果はほとんどありませんでした。文書や初期の癌のウェブサイトには、この病気についての簡単な言及しかありませんでした。最も印象的だったのは、生存者の少なさでした。

1994年当時、膵臓がんで診断後5年以上生きた人はほとんどいませんでした。5年生存率は3%で、ほとんどの人が数ヶ月で死亡していました。膵臓がんのほぼすべての症例は、膵臓以外に転移してから診断され、有効な治療ができないほど手遅れになっていたと1999年に設立された米国Pancreatic Cancer Action Network(PanCAN:パンキャン)の代表であるジュリー・フレッシュマン氏は言います。

幸運なことに、ケイズさんの医師は、彼女が胆石によるものと思われた背中の痛みのために緊急治療室を訪れた後、彼女の膵臓がんを偶然にも発見しました。幸い早期な発見だったので、手術は成功しましたが、それでも彼女の医療チームは、がんは数カ月でほぼ確実に再発すると彼女に告げました。17歳の息子を持つケイズさんは、その話を聞いて自分の命は尽きたと思いました。

アリゾナ在住の彼女は、以前作成したバケットリストの項目をチェックし、実行し始めました。(編集注:バケットリストとは人が死ぬ前にやりたいことをリストにしたものです)地元のコミュニティ・カレッジで手話コースを受講し、癌の子供たちのためのサマーキャンプのカウンセラーになって子供たちのために働くという生涯の夢をかなえることができました。厳しい予後宣告にもかかわらず、当初考えていた数カ月は数年になり、診断から5年が経とうとしているときでも、彼女はまだ生きていました。

「最初の5年間は、私は死ぬのだと思いながら生きていました。最善を望みましたが、最悪の事態も想定していました」とケイズさんは振り返ります。

生存期間が5年という節目に近づいたとき、ケイズさんは悲痛な知らせを受けた。画像検査の結果、膵臓に新たながんが見つかったのでした。1999年、彼女は膵臓と脾臓を全摘出する手術を受けましたが、がんは近くのリンパ節に転移していました。最初の診断から8年後の2002年、ケイズさんはゲムシタビンという薬を使ったネオアジュバント化学療法を受け、リンパ節にできた腫瘍を縮小させてから、医師が手術でリンパ節を切除しましたた。ネオアジュバント化学療法とは、手術前に化学療法薬を服用することで、1994年のケイズさんの診断後に膵臓がんの治療法として導入されたものでした。

ケイズさんはこの医学的進歩を、希望を見つけるのが難しい膵臓がんに対する希望の兆しとして見ました。治療の進歩にもかかわらず、膵臓がんは今日でも主要ながんの中で死亡率が最も高いものです。ほとんどの膵臓がんは、発見が遅すぎて効果的な治療ができません。このような不利な状況にもかかわらず、ケイズさんは過去20年にわたり、希望を患者支援の礎としてきました。膵臓がんを克服して30年になる現在、彼女は膵臓がんの研究を推進し、この病気に対する認識を高めるために活動しています。

 

▪治療が難しい病気

膵臓は消化器系の一部で、消化液や血糖値を調整するホルモンを分泌するスポンジ状の臓器です。腹部の奥深く、胃の後ろに位置し、肝臓、脾臓、小腸に囲まれているため、通常の健康診断では膵臓の腫瘍を見たり感じたりすることはできません。膵臓がんの標準的なスクリーニング法や診断ツールはありません。

膵臓がんの症状は、癌が進行してから現れることが多く、黄疸(目や皮膚が黄色くなる)、腹痛や背部痛、吐き気、嘔吐、体重減少、食欲不振などがあります。早期の膵臓がんは通常、徴候や症状を引き起こしません。ケイズさんの場合は、診断前に体重減少と継続的な背中の痛みを経験しています。

どの年齢の人でも膵臓がんになる可能性はありますが、最も一般的に診断されるのは高齢者です。膵臓がんの症例の約3分の2は65歳以上の成人に見られます。喫煙、太り過ぎ、糖尿病や膵臓がんの家族歴は、この病気の重要な危険因子ですが、危険因子がわかっていない人も診断されています。

 

▪どのような人が膵がん検診を受けるべきか?

膵臓がんを発症するリスクが高い人は、がんを早期に発見するための検査を受けることが重要です。

アリゾナ州スコッツデールにあるHonorHealth Research Instituteの腫瘍内科医兼腫瘍学部長であり、ケイズさんの現在の主治医であるErkut Borazanci氏によれば、歴史的には膵臓がんはひとまとめにされていました。しかし、過去数十年間で、分子腫瘍検査と生殖細胞系列遺伝子検査の進歩により、研究者と医師は膵臓がんの異なるサブタイプについてより深く理解することができるようになったと彼は言います。

膵管腺癌(PDAC)は、消化液を膵臓から小腸に運ぶ細い管から発生するもので、膵臓がんの中で最も多く、膵臓腫瘍全体の90%以上を占めます。また、最も侵攻性が強く、致死的な形態のひとつでもあります。

ケイズさんの腫瘍は、膵粘液性腺がんと呼ばれる希少なタイプの膵臓がんで、40代から50代の女性に最もよく発症する亜型です。ケイズさんのような粘液性腫瘍は、膵管からではなく、膵臓の上皮、つまり表層から発生します。腫瘍のほとんどは良性ですが、15%から30%は悪性癌へと移行します。1999年、ケイズさんは膵臓癌の別のサブタイプである乳頭腺癌であることを知りました。

2004年と2006年、ケイズさんは膵臓癌の再発を経験し、癌が肺に転移したため、2006年に右肺下葉を摘出する手術を受けました。現在も毎年画像検査を受けていますが、最近、肺、甲状腺、腎臓に結節が見つかりました。しかし今のところ、結節は成長していないようなので、彼女は治療を受けずに「様子を見る」ことにしています。

「生存期間はジェットコースターのようなものです。研究が何をもたらすかわからないから、一日一日を頑張るしかないのです」と彼女は言います。

 

▪研究のための力

ケイズさんが初めて同じ膵臓がんサバイバーに会ったとき、彼女はすぐにサバイバーシップの初期に見逃していた「コミュニティとつながり」の感覚を感じました。がんサポートグループを通じて彼と知り合ったケイズさんは、彼を質問攻めにしました。「後で友人になったとき、彼は最初、私のことをストーカーだと思っていたと打ち明けてくれました」と彼女は笑います。2人は、7年間生存した彼が亡くなるまで友人であり続けました。

ケイズさんはサポート・グループを通じて、質問をし、治療法の選択肢についてよく知り、意思決定に参加することで、医療に積極的に参加する方法を学びました。ケイズさんは、「目からウロコでした。そんなことができるなんて知りませんでした。私が育った時代には、医師に質問することはありませんでしたし、主治医の言うことを聞いて、それを実行するだけでした」と言います。

アリゾナ州フェニックス郊外のサンシティに住むケイズさんは、患者のサポーターとして他の人々を助けたいと思いました。2003年、彼女は「アリゾナ膵臓がんサポートネットワーク」を共同で設立しました。グループのメンバーは、生存確率を向上させる可能性のある膵がん研究についてもっと知りたがっていました。ケイズさんはできる限り情報を集めましたが、報告すべき新しい研究はあまりありませんでした。彼女には、研究者が膵臓がんに興味を持っていないように思えました。

ケイズさんはこの状況を変えたいと思い、米国国立がん研究所(NCI)にメールを送り、どうすれば膵臓がん研究の促進に貢献できるかを尋ねました。そこから彼女はNCIのSpecialized Programs of Research Excellence(SPORE)に関わるようになり、2004年にはアリゾナ大学がんセンターに消化器SPOREを設立する手助けをしました。SPOREが資金提供する研究プロジェクトは、予防、早期発見、診断、治療に対する新しく多様なアプローチを調査するもので、ケイズさんは消化器SPOREの試験的研究プロジェクトの審査に携わりました。

恩返しをしたいというケイズさんの願いは、第2のキャリアへと花開きました。患者と研究者の橋渡し役として、彼女は新たな役割を見出しました。ケイズさんは2005年に米国癌学会(AACR)のScientist↔Survivor Program(SSP)に参加し、主要な研究トピックについて学び、患者支援者仲間、科学者、医師、その他の医療専門家と交流しました。その年のSSPでは、一緒に研修を受ける膵臓がん患者のアドボケイトがいなかったため、ケイズさんは他のがん種の患者アドボケイトから学びました。

2011年、ケイズさんは国防総省に新しく設立された膵臓がん研究プログラムの患者アドボケイト・メンバーに選ばれました。そこで彼女は、研究デザインや助成金申請書が患者のニーズに合っているかどうかを検討しました。「科学者や臨床医の集団の中で、素人が発言したり質問したりするのは、本当に気後れするものです」とPanCAN代表であるフレッシュマン氏は言います。「ケイズさんはそれを恐れませんでした」。

ケイズさんはNCIやAACRの助成金審査委員会や委員会の委員を務め、現在は膵臓癌研究を支援する非営利団体、シーナ・マゴウィッツ財団のアンバサダーを務めています。同財団とともに、彼女は2022年に国際的な支援グループ「膵臓がんSOS」の結成を支援しました。

フレッシュマン氏は、ケイズさんがPanCANの初期にボランティアを始めたときに初めてケイズさんに会いましたが、当時はまだ膵臓がん研究のコミュニティがなかったと言います。それとは対照的に「今日、私たちのデータベースには、いつでも参加できる臨床試験が160ほどあります」。ケイズさんは、膵がん研究の優先順位の形成に貢献することで、その進化に不可欠な役割を果たした、とフレッシュマン氏は言います。

左から、ミルウォーキーにあるウィスコンシン医科大学の外科医ダグラス・B・エヴァンス、シーナ・マゴウィッツ財団の創設者兼CEOロジャー・マゴウィッツ、フェニックスにあるトランスレーショナル・ゲノミクス研究所の腫瘍学者ダニエル・D・フォン・ホフ。写真:キャリー・エヴァンス、提供:シーナ・マゴウィッツ財団

道のりはまだ長いが、膵臓癌の研究は実を結び始めています。化学療法の併用により、進行膵臓癌の一部の人の生存期間が改善されました。スクリーニング・ツールにより、膵臓癌のリスクが高い一部の人々において、治療可能な早期に膵臓癌を発見できるようになりました。PARP阻害剤を含む分子標的薬は現在、膵臓癌に特定の遺伝子変異がある人のがんを抑えるための維持療法として使用されています。膵臓がんで "維持療法 "という言葉が使われるようになったことは、大きな進歩です」とボラザンチ医師は言います。

 

▪他の人々を鼓舞する

ケイズさんは、他の膵臓がん患者とその家族にとって、インスピレーションを与えるロールモデルとなっています。ペンシルベニア州ホリデーズバーグに住むキャシーさんは、48歳の夫グレッグさんが2010年2月にステージIVの膵臓がんと肝臓がんと診断され、余命2週間と告げられたとき、喪失感を感じました。個人的なつながりで、夫妻はケイズさんに出会うことができ、「同じ経験をした人と話すのは、とても心強かったです」とキャシーさんは振り返ります。グレッグさんは2011年8月に亡くなりましたが、ケイさんの前向きなエネルギーはキャシーさんの夫を元気づけ、彼は診断から19ヵ月間生きることができました。

「ケイさんがいなかったら、私たちはおそらく希望を失っていたでしょう」と彼女は話ます。ケイズさんの模範に触発された夫妻は、膵臓がんをめぐる患者、医師、地域社会をつなぐグレッグ&キャシー・グリフィス・ファミリー財団を立ち上げました。「ケイさんが私たちにとってそうであったからです」とキャシーさんは言う。

30年間膵臓がんを克服し、患者を擁護してきた彼女の人生を振り返りながら、ケイズさんは立ち止まりました。「一緒に旅をしてきた人たちのほとんどが亡くなってしまったので、本当につらいです」と彼女は話します。しかし、彼女は微笑み始め、こう言いました。「とても良くなった。これからも良くなっていくでしょう」。

 

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リンゼイ・コンケル・ニーボア氏は、ニュージャージー州を拠点に科学、健康、環境について報道するジャーナリストです。

『Cancer Today』誌は、AACRより発行されています。PanCANのジュリー・フレッシュマン(Julie Fleshman)氏とPanCAN Japanの眞島喜幸(Yoshiyuki Majima)氏は、Cancer Today誌のEditorial Advisory Boardメンバーです。

 

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