背景:標準治療薬ゲムシタビンとの併用療法は、エルロチニブを除いては有意差が認められていない。膵臓がん細胞を取り巻く、がん間質にSPARC(システイン豊富な、酸性、分泌たんぱく質)が過剰発現すること、また、 SPARC遺伝子発現と細胞悪性度の間には相関があり、予後とも関連することが知られている。がん細胞の転移には周囲の間質細胞との相互作用が必要である。SPARCは、細胞外マトリックス(ECM)と細胞の相互作用を制御するタンパク質で、がん細胞から細胞外マトリックスに分泌される。ナブパクリタキセル(ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル)は、内因性アルブミン経路を利用し、gp60を介在した内皮的トランスサイトーシスおよびSPARCとアルブミンの結合により集積を増加し、腫瘍内へ薬剤を浸透させる作用を持つ。フェーズ1/2の主目的は、安全性( 用量MTD、毒性DLT、有害事象AE)と有効性の検証である。
結論:
結論:Gem+NPの併用療法は、進行膵癌患者において一般的に忍容された。最大耐用量(MTD)は, NP 125mg/㎡ Gem 1000mg/㎡ 投与方法は、毎週1回x3wk継続し、1wk休薬(3投1休)。予備的な分析によれば抗腫瘍効果はこの併用療法が膵癌に対して有効であることを示唆した。大部分の患者は、治療の第1サイクル中にCA19-9値が50%以上減少することが観察された。CA19-9値は、奏功率(RR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)に強く相関した。予備的な分析において、SPARC+はNPとGemの効果と強く相関することが示唆された。上記の結果から、NP+Gemは、進行膵癌患者の治療に有効な可能性が認められる。
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説明: パクリタキセルPaclitaxel(商品名 タキソールTaxsol )をアルブミンで封入したナノ粒子製剤のアルブミン結合パクリタキセル。パクリタキセル誘導体のDDS製剤である。水に難溶性のパクリタキセルを溶解するために通常の製剤で使用されている溶媒ポリオキシエチレンヒマシ油(クレモホールEL)を含有しないため、その副作用による過敏症を防ぐためのステロイド剤等の前投薬を必要としない。パクリタキセルをアルブミンで封入したナノ粒子製剤のアルブミン結合パクリタキセル注射用懸濁液。2005年1月に米国で併用化学療法不応の転移性乳癌あるいは術後補助化学療法6ヶ月以内の再発乳癌を適応としてFDAにより承認された。日本では開発・販売権を取得した大鵬薬品工業が承認申請中。 (参考: Wikipedia)