【術後化学療法 JASPAC試験について】
静岡がんセンター上坂克彦先生(静岡がんセンター 副院長 兼 肝・胆・膵外科部長)のコメントをご紹介します。
「今回の私たちの研究結果は、当初の私たちの予想を大きく上回る、たいへんすばらしいものでした。従来、膵がんの手術の後には、再発率を下げるためにゲムシタビンによる補助化学療法(抗がん剤治療)を行ってきました。
手術の後にゲムシタビンを使うと、使わない場合に比べて、明らかに再発率が下がり、結果として生存率が向上するからです。しかし、今回の研究結果は、ゲムシタビンのかわりにTS-1を用いると、ゲムシタビンよりも再発のリスクを減少させ、死亡のリスクを44%減少させること、結果として生存率が一層向上することを明らかにしました。
難治がんの代表である膵がんに対する手術後の死亡のリスクをこれだけ飛躍的に減少させた研究は近年にはなく、画期的な進歩と言えます。また、TS-1は飲み薬であり、有害事象(副作用)の頻度もゲムシタビンと遜色なく、使いやすい薬と言えます。
今回の研究結果に基づいて、日本の膵癌診療ガイドラインが書き換わることを期待しています。またこの結果が、膵がんに苦しむ患者さんやご家族にとって、大きな福音となれば幸いです。最後に、今回の研究に参加してくださった患者さん、そのご家族、そして私たちの研究グループ(JASPAC)の参加施設のスタッフの皆様に感謝申し上げます。」
膵がん患者のS-1(抗がん剤)術後補助化学療法の臨床試験で生存率が大幅上昇
静岡県立静岡がんセンター
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