海外ニュース:膵臓癌に対する免疫標的療法イブルチニブのP2臨床試験
2017年1月12日
ある種の免疫細胞とがん細胞間のシグナル伝達を阻害する医薬品は、膵臓癌の標準治療に加えると治療成績が改善するか?
標的免疫療法薬のイブルチニブ(ibrutinib;商品名イムブルビカ)は、米国では特定の白血病およびリンパ腫の治療に承認されており、日本では2016年3月に「再発または難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)」について承認され、「再発または難治性のマントル細胞リンパ腫」に対しても追加承認申請されている。イブルチニブは、経口投与可能な選択的不可逆的酵素阻害薬であり、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬である。ここに紹介するのは、ステージ4の膵癌患者が使う標準治療ゲムシタビン+ナブパクリタキセルに標的免疫療法イブルチニブを併用するフェーズII臨床試験である。
■標的療法を理解する
標的治療とは、がん細胞の分子的特徴のなかから、特にがん増殖を促している信号を伝達する箇所を特異的に標的とする薬物を用いることで、がん細胞の増殖を抑制したり、あるいはがん細胞を殺すことを意図するものである。 B細胞は免疫系の一部で、悪性B細胞は、膵臓癌の成長および進行を促進することが知られている。イブチニブは、キナーゼ(具体的には、Brutonのチロシンキナーゼ、またはBTK)と呼ばれる、細胞内の一種のシグナル伝達分子を阻害することによって作用する。研究室レベルでは、イブルチニブは悪性B細胞を再プログラムして膵臓癌の進行をとめ、また、膵臓癌を死滅させるCD8 + T細胞の数も増加させている。
■イブチニブのフェーズ2臨床試験について
この臨床試験は、外科切除を受けていないステージIVの膵臓癌患者を対象としていて、イブチニブには標準治療の上乗せ効果が期待されている。標準治療としては、細胞分裂を阻害し、細胞死を促進するナブパクリタキセルとDNA死を引き起こす2種類の代謝物となるゲムシタビンを併用したGA療法が投与される。イブチニブは、ゲムシタビンおよびナブパクリタキセルと一緒に投与される。1グループでは、薬物の最も安全な投与量を決定するために、イプチニブの用量が何段階か増加されて投与される。他のグループでは、イブチニブのみが1週間投与され、それからGA療法が追加される。被験者は免疫反応を測定するためにイブチニブ投与の前後で生検を受ける。
Source: Let's Win -sharing science solutions for pancreatic cancer, Lustgarten Foundation
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担当医に相談して、適切な臨床試験を受けることをお勧めします。 ウェブサイトClinicaltrials.govには、この試験についての詳細や他の多くの情報が掲載されています。 Clinical Trials Finderにアクセスして、すべての有効な、膵臓癌に関する臨床試験の一覧を見ることができます。
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