pancan vitrakvi

分子プロファイリングを基にして臓器横断的に承認された2つ目の膵臓がん治療薬

Allison Rosenzweig, PhD, Science Officer, Pancreatic Cancer Action Network:PanCAN
Lynn Matrisian PhD、MBA、Chief Science Officer, Pancreatic Cancer Action Network: PanCAN)

2018年11月26日

ラロトレチニブ(Larotrectinib)(商品名Vitrakvi????[ビトラクビ])は、特定の遺伝子特性を有する固形癌の患者におけるその有効性に基づいて本日、米国食品医薬品局(FDA)により承認された。ラロトレチニブはトロポミオシンキナーゼ受容体の阻害剤である。

FDAは、臓器横断的に身体内のあらゆる局所進行性または転移性のNTRK融合遺伝子を有する固形癌の治療用として、ラロトレチニブを迅速承認しました(オーファンドラッグ指定)。バイエル社とLoxo Oncology,Inc社によって開発されたこのラロトレチニブ(Latoretinib)は、その腫瘍がNTRK融合遺伝子を持っている大人と子供の治療薬として臨床試験でテストされた。 ラロトレチニブは75%の患者で腫瘍を縮小し、その効果は73%で少なくとも6ヵ月の無増悪生存期間をクリアし、39%が1年以上の無増悪生存期間を示した。

「NTRK融合遺伝子は膵臓癌で発生する可能性は非常にまれで、0.5%未満の症例で発生すると考えられている」とリン・マトリジアン博士は説明する。

「NTRK融合は、異なる染色体上に位置する2つの遺伝子が異常に結合した結果、発生します。得られたハイブリッドタンパク質は癌を引き起こす活性を増強します。しかし、幸いなことに、ハイブリッドタンパク質はラロトレチニブのような薬による阻害を受けやすい特徴があります。」

融合遺伝子についての情報、ならびに突然変異および他の異常は、遺伝子検査分子プロファイリング検査を通して収集される。そしてこの癌細胞の遺伝子情報を使用して治療の決定を導くことはゲノム医療(プレシジョンメディシン)として知られている。

膵臓がん患者は、治療施設または米国PanCAN本部の『Know YourTumor®精密医療サービス』を通じて遺伝子検査・分子プロファイリングにアクセスできる。すべての膵臓の腫瘍は異なるため、PanCANでは最善の治療選択肢を決定するために遺伝子検査・分子プロファイリングを受けることを強く推奨している。

(編集注:日本の場合、2019年4月以降、ゲノム中核病院とその関連施設で保険償還された遺伝子検査を受けることができると期待されている)

マトリジアン博士は続けて、「このような融合変異はまれですが、Know Your Tumorプロジェクトを通じて、膵臓癌患者の約半数に少なくとも1つのアクショナブルな遺伝子変異があることがわかりました。遺伝子検査を通じて得られた情報は、これらの患者さんの治療法の決定に影響を与えます。」

ラロトレチニブ(Vitrakvi????[ビトラクビ])は、腫瘍のある部位にかかわらず、患者の腫瘍の分子情報に基づいてFDAにより臓器横断的に承認された2番目の例で、この種の臓器横断的に分子プロファイル情報に基づいて承認された最初の医薬品は2017年春のペンブロリズマブ(Keytruda????)でした。

「Know Your Tumorプロジェクトを通じて遺伝子検査・分子プロファイリングのレポートを受けた1000人以上の患者の中で、NTRK融合遺伝子を有したのは2人でした」とマトリジアン博士は語る。

「歴史的に、抗がん剤は乳がん、肺がん、大腸がんの治療薬として承認されてきましたが、現在はがん細胞の分子的な脆弱性を攻撃する、より標的を絞った治療法の方向に向かっています。」マトリジアン博士は説明する。「腫瘍が特定の分子標的療法または免疫療法に反応するかどうかを患者が知ることができる唯一の方法は、遺伝子検査・分子プロファイリングによるものです。」

マトリジアン博士は、「製薬会社とFDAが、単に腫瘍のある体の中の位置ではなく、腫瘍の生物学に基づいて、患者のためのより個別化された治療開発の方向に向かって動くことを奨励している」と付け加えた。事実、乳がん、肺がん、大腸がんといったがんの種類ごとに薬剤を開発するのではなく、ある特定の遺伝子異常を治療する薬剤の開発がいま進められている。2017年5月に臓器横断的に承認された最初の薬剤ペンブロリズマブ(Keytruda????)は、「マイクロサテライト不安定性が高い(MSI-H)またはミスマッチ修復機構の欠損(dMMR)を有する固形癌」を対象に承認された。(2018年12月に厚生労働省で承認された)

参考情報:
1.バイエル社とLoxo Oncology社のTRK融合遺伝子変異の固形癌対象のラロトレクチニブ、FDAから優先審査を付与
http://pharma.insights4.jp/archives/10093

 

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