国内ニュース:膵がんの予後不良型に血液がんの薬が効くかもしれない
国内ニュース:膵がんの予後不良型に血液がんの薬が効くかもしれない
2018年12月17日
研究発表の記事から。東京医科歯科大学(文京区)の研究グループが、多くの膵がん患者さんのがん組織の遺伝子変異を詳細に研究し、3つのタイプに分かれること、さらに最も予後が悪いタイプの膵がんに血液がんの治療薬が有望であるとする研究結果をまとめ、がん研究の国際科学誌International Journal of Cancerの2018年12月17日のオンライン版に発表しました。
本研究は重要な2つの点を示唆しています。1つは「膵がんでもほかのがんのように遺伝子変異をもとにした個別化治療を研究する価値があること」、もう1つは「そこから新しい治療薬が見出される可能性があること」です。論文の解説も掲載していますので、詳細は以下をご参照ください。
AACR:膵臓がんの遺伝子変異にマッチした治療の臨床結果
AACR:膵臓がんの遺伝子変異にマッチした治療の臨床結果
2018年6月28日
Allison Rosenzweig, PhD
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米国パンキャン本部(PanCAN)は、膵臓がんの治療選択を患者の腫瘍の分子プロファイルを基にすることで患者のアウトカム改善に繋がることを示しました。
本日、米国癌研究学(AACR)の会誌であるClinical Cancer Researchにおいて、米国PanCAN本部の『あなたの腫瘍を知ろう(Know YourTumor)』精密医療サービスを受け、遺伝子変異にマッチした分子標的薬を投与された患者の有望な試験結果が発表されました。精密医療(がんゲノム医療)では、患者の腫瘍の特定生物学的特徴に基づいて患者の治療を選択し、決定することができます。患者の腫瘍の特性・遺伝子変異に合わせた分子標的薬で治療を受けた患者の予後・アウトカムは標準療法と比較して改善されたと発表されました。
国内ニュース:国立がん研究センターが開発した国産遺伝子パネル検査「NCCオンコパネル」システムが製造販売承認取得
国内ニュース:国立がん研究センターが開発した国産遺伝子パネル検査「NCCオンコパネル」システムが製造販売承認取得
2018年12月26日
国立がん研究センター(理事長:中釜 斉/所在地:東京都中央区)は、がんのゲノム医療を提供する遺伝子パネル検査システムとして、当センターで開発した遺伝子検査試薬「NCCオンコパネル」と遺伝子変異を検出する解析プログラム「cisCall(シスコール)」の有用性や、解析結果に基づき薬剤選択の検討を行うエキスパートパネルの体制などを、中央病院の臨床研究TOP-GEAR(トップギア)プロジェクトで検証し、保険適用を目指し先進医療での確認を進めています。遺伝子パネル検査については、シスメックス株式会社(代表取締役会長兼社長 CEO:家次 恒/本社:神戸市)と共同で開発を進め、薬事承認を目指してまいりました。そして、2018年6月に同社より製造販売承認申請が行われ、この度2018年12月25日に遺伝子パネル検査システムで初めて体外診断用医薬品・医療機器として承認されました。
ASCO:NTRK/ROS1融合遺伝子のある転移性膵臓癌患者に対するエントレクチニブの臨床的有用性
NTRK/ROS1融合遺伝子のある転移性膵臓癌患者に対するエントレクチニブの臨床的有用性
Abstract No:521
著者:Michael J. Pishvaian, Christian Diego Rolfo, Stephen V. Liu, Pratik S. Multani, Edna Chow Maneval, Ignacio Garrido-Laguna
背景:生存率の改善を示した膵臓癌に対する化学療法の最近の改善にもかかわらず、奏効率は50%未満のままである。特定の実用的な分子変化を有する膵臓癌の異なる分子サブグループが最近同定された。これらには、受容体型チロシンキナーゼNTRKおよびROS1の融合遺伝子が含まれる。エントレクチニブは、CNS活性で強力かつ選択的なTRKおよびROS1阻害剤であり、NTRKまたはROS1融合を有する局所進行性または転移性固形腫瘍を有する患者において実質的な臨床活性を示した。(Drilon A, et al. Cancer Discov. 2017;7[4]:400-409).
AACR: 標的化学療法
AACRの雑誌 CancerTODAYの記事ー「標的化学療法」より
「Targeted Chemotherapy(標的化学療法)」 FALL2018号/Vol.07
Sue Rochman著
2018年9月25日
ほとんどの癌患者は化学療法を含む治療計画を立ててもらいます。患者が受ける化学療法の薬の多くは、何十年もの間一般的に使われてきた細胞障害性抗がん剤です。これらの治療法は、しばしば人々の生命を延ばすことができるので、提供され続けていますが、それらの抗がん剤をより効果的に使用する方法がある可能性があります。カリフォルニア大学サンフランシスコ校のHelen Diller Family総合がんセンターの計算および分子生物学者、Sourav Bandyopadhyay氏は、がん細胞内の生物学的ネットワークががん治療が腫瘍の反応に与える影響を研究しています。
Bandyopadhyay氏のチームは、2018年4月17日のCell Reportsに、患者の腫瘍の遺伝学を分析することが化学療法に対するよりターゲットを絞ったアプローチにつながる可能性を示唆する研究を発表しました。 Cancer Todayは、Bandyopadhyay氏の研究と、なぜ従来の細胞障害性抗がん剤を使用する伝統的な治療法を再考することが重要なのかについて話しました。
ASCO:膵臓がんにおけるマイクロサテライト不安定性
ASCO:膵臓がんにおけるマイクロサテライト不安定性(MSI-H)
Microsatellite instability in pancreatic cancer.
著者:Jennifer Marie Eatrides, Domenico Coppola, Sameer Al Diffalha, Richard D. Kim, Gregory M. Springett, Amit Mahipal Show LessMoffitt Cancer Center, Tampa, FL; H. Lee Moffit Cancer Center, Tampa, FL; H. Lee Moffitt Cancer Center & Research Institute, Tampa, FL
背景:マイクロサテライト不安定性(MSI)は、欠陥のあるミスマッチ修復タンパク質機能に関連する癌の特徴であり、大腸癌(CRC)でよく特徴付けられています。 大腸癌では、高レベルのMSIがより良い全体的な予後と免疫療法の有益性の増加を予測することがわかっている。膵臓癌は、(他の癌に比較して)利用可能な全身治療の選択肢がほとんどなく、化学療法および放射線に対して非常に耐性がある。免疫に基づく治療法は多くの癌において大きな成功を収めてきたが、それらは膵臓癌においてほとんど臨床的利益を示さなかった。膵臓癌におけるMSIの有病率を評価した研究はほとんどなく、MSIが高い(MSI-H)患者とMSIが安定した(MSI-S)患者とを特徴付ける研究論文はない。MSIは免疫療法に反応する患者のサブセットを予測する可能性があるため、膵臓癌におけるMSIの発生率および臨床的影響を調査することを目的とした。
ASCO:膵臓がん患者のためのプレシジョン医療「あなたの腫瘍を知ろう(Know Your Tumor)」プログラムの予備結果
ASCO:膵臓がん患者のためのプレシジョン医療「あなたの腫瘍を知ろう(Know Your Tumor)」プログラムの予備結果
Abstract No:4126
著者:Emanuel Petricoin, R Joseph Bender, David Charles Halverson, Lola Rahib, Andrew Eugene Hendifar, Sameh Mikhail,
背景:膵がん患者のケアにおけるプレシジョン医療(PM)の実施をより一般化するために、治療判断支援ツール/報告書を作成するターンキーPMオペレーティングシステムを使用した「あなたの腫瘍を知ろう(Know Your Tumor: KYT)」プログラムが開始された。
方法:44の州をカバーする287のアカデミックなハイボリュームセンターと地域の医療施設から640人の患者の腫瘍サンプルが得られた。我々のシステムは、IRB承認のレジストリプロトコルで、生検からマルチオミック分子プロファイリング、治療歴の統合、その後のコンピュータ解析を通した患者の個別化された治療オプションを決定する支援ツールを提供する。縦断的結果は、治療の決定および患者の経験と共に、すべての患者のものが集められる。
結果:腫瘍サンプルは、患者の91%において次世代シーケンシングに適切であった。また、96%において免疫組織化学染色に適切であった。 KRAS突然変異は、膵管腺癌の92%において同定された。腫瘍ボードは、すべての患者の検査結果をレビューし、患者の50%(高度にアクショナブルな遺伝子変異は27%)にアクショナブルな遺伝子変異を見出した。また、アクショナブルなプロテオーム変異(化学的マーカーを除く)は5%の患者に見出された。よく観察されたアクショナブルな変異は、DNA修復遺伝子(BRCA1 / 2またはATM変異が8.4%)、細胞周期遺伝子(CCND1 / 2/3またはCDK4 / 6の改変が8.1%)であった。サンプルのサブセットをアクショナブルなリンタンパク質マーカーについて評価した。今日までに、126人(19.7%)の患者が腫瘍解析結果に基づき、分子的にマッチした治療を受けている。マッチした治療(n = 17)を受けた、非常に有効なバイオマーカーを有する患者の無増悪生存期間(PFS)の中央値は4.1ヶ月であり、高度に有効なバイオマーカーをもたない患者(n = 72; PFS = 2.8ヶ月; = 0.03)と比較して優位に長かった。
結論:包括的なプレシジョン医療(PM)システムは、膵臓がんの約25%の患者で観察される非常にアクショナブルな変異の知見を用いて、地域の医療施設およびアカデミックながんセンターでも実施することができる。腫瘍が高度にアクショナブルな分子変異を有し、それにマッチした治療法を受けた患者は、有意にPFSが増加した。私たちの研究は、膵がんにおけるプレシジョン腫瘍学の拡大と今後の評価を支援します。
Source: ASCO Journal of Clinical Oncology