膵がんにおけるATM遺伝子変異とそれに関連する化学療法
「膵癌におけるATMの機能不全とそれに関連する化学療法」
日本の膵がん患者に多くみられる遺伝子変異に含まれるのがATM遺伝子です。ここではATMの役割と化学療法との関係性について説明します。
▪要約
膵がんは、転移したがんを治療するための治療オプションがほとんどないまま、最も致死率の高い固形腫瘍の一つとして残っています。がん遺伝子パネル検査の利用により、膵がん患者の約25%で治療薬のある変異が同定されるようになりました。特にDNA損傷応答(DDR)遺伝子であり、がん細胞をDNA損傷剤やPARP阻害剤などのDNA損傷応答阻害剤に対して、より敏感にするものがわかってきました。ATM(Ataxia Telangiectasia Mutated)は最も一般的に変異するDDR遺伝子の一つで、膵がんの2-18%のケースで体細胞変異が、膵がん患者の1-34%で生殖細胞変異が同定されています。ATMは、細胞周期チェックポイントキナーゼで、多くの下流タンパク質の調節因子として、ゲノム安定性のためのDNA損傷応答を担当する複雑な役割を果たしています。ATM信号伝達経路の破綻は、他のDNA修復機構、特にATRやCHK1に依存することにつながり、ATM変異陽性の膵がんで下流タンパク質の阻害を利用した治療ターゲット化を可能にするかもしれません。このレビューでは、ATMの機能を詳細に説明し、膵がんにおけるATM欠損の現在のデータを検討し、ATM経路に関連する現在の臨床試験についても探求します。