政策提言:ゲノム医療を膵臓がん患者に届けるための要望書(2021年度版)
【要望】 米国との格差(アクセスラグ)を解消し、膵臓がんの既承認薬が使用できるよう、診断時に「がん遺伝子パネル検査」が受けられる体制の実現を強く要望します。
■要望の背景
・診断時のがん遺伝子パネル検査について
米国では膵臓がん患者は、診断時にがん遺伝子パネル検査を受け、検出されたがん遺伝子変異にマッチした治療を受けることができます。そのようなゲノム医療は、標準治療を受けた場合と比較して治療効果(奏効率)がとても優れていて(HR=0.34)4、しかも費用対効果も高い(ICER=$37,365/QALY)5 ことがわかりました。そのような背景から(標準治療よりも治療効果が優れていて、しかも費用対効果の高い)ゲノム医療を推進するために米国の膵臓がん診療ガイドラインである、NCCNガイドライン7が2018年に改訂され、それ以降、米国の膵臓がん患者全員に診断時に生殖細胞系遺伝子検査(Germline Test)、また手術が不適応な進行性膵臓がん患者には「がん遺伝子パネル検査」(Somatic Test)が推奨されました。それにより、膵臓がん患者の約26.2%にアクショナブルな遺伝子変異がみつかり3、遺伝子変異に対応するさまざまな薬剤が膵臓がんのゲノム医療では使われています1。
日本でも、膵臓がんのゲノム医療で承認されている薬剤1は米国同様に増えてきていますが、問題は、診断時に「がん遺伝子パネル検査」が受けられないためにそれらの新しく承認された薬剤が治療の選択肢として考慮されないという「アクセスラグ問題」が膵臓がん患者の前にたちはだかっていることです。これを解決しないことには米国の膵臓がん患者のようにゲノム医療が、日本の膵臓がん患者に届くことは難しい状況です。